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戦国異伝供書
第百二十七話 橙から灰色へその三

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「そこはです」
「褒美は弾んでよく」
「笑顔が好きということもです」
「よいというのですか」
「実に。だからこそ羽柴殿は人たらしですな」
「左様、こ奴がいて随分と助かっております」
 織田家の重鎮の中の重鎮と言っていい柴田も言ってきた。
「何かと」
「左様でありますな」
「はい、人たらしだけでなく」
「まさに何かとですな」
「助かっています」
「左様でありますな」
「そして顕如殿についても」
 柴田は顕如にも話を振った。
「何かとです」
「拙僧もですか」
「その知識と知恵には」
「そうであればいいですが」
「いや、敵であった時はこれ以上はないまでに厄介でしたが」 
 これは本願寺自体がだ、織田家にとって一向宗との戦は忘れられないものであったから言うのだ。
「今はです」
「拙僧がここにいてですか」
「はい」
 まさにというのだ。
「百人力です」
「左様ですか」
「今はそう思っています」
「そうですか、思えばここまで何かとありました」
 ここで顕如は遠い目になって柴田に答えた。
「まことに」
「本願寺のことにですな」
「はい、拙僧自身のことも」
 その両方がというのだ。
「何かとありました」
「顕如殿もですか」
「はい、何かとあって」
 それでというのだ。
「今そのことを思い出しました」
「そうですか、では」
「はい、これよりですな」
「お話をして宜しいでしょうか」
「はい」
 柴田は笑顔で答えた。
「そうして下さい」
「それでは」
「さて、これまで色々お話を聞かせてもらいましたが」
 家康も言ってきた。
「今度は顕如殿ですな」
「そうですな、そしてどうも拙僧がです」 
 顕如は家康に応えてから周りを見回して言った。
「最後ですな」
「ですな、それがしもお話してです」
「順番に巡り」
「顕如殿が最後で」
「それで終わりで」
「はい、では最後を務めさせて頂きます」 
 こう言ってだった。
 顕如は静かに語りだした、その話はというと。
 この時顕如はまだ子供であった、だが父に呼ばれて言われた。見ればその顔がかなりやつれていて顔色も悪かった。
 それでだ、彼に弱い声で言ってきた。
「お主にこれから得度を行いたい」
「得度ですか、ですが」
 まだ子供の顕如が応えた。
「私はまだ」
「うむ、見ればわかるな」
「はい、父上も」
「拙僧は長くない」
 こう言うのだった。
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