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戦国異伝供書
第百二十七話 橙から灰色へその二

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「そうして戦いました」
「そうでしたか」
「そして我等は今後もです」
「薩摩と大隅においてですか」
「生きていきまする」
 その様にするというのだ。
「それで充分であります」
「官位もですか」
 今度は羽柴が言ってきた。
「そちらも」
「ははは、頂けるなら嬉しいですが」
 義久は羽柴に笑って返した。
「しかし強くはです」
「求められませぬか」
「あくまで薩摩と大隅、それにです」
「日向のご領地をですか」
「守ることが出来れば」
 それでというのだ。
「充分です、石高もです」
「そちらもですか」
「求めませぬ」
「今以上は」
「左様であります」
「そうですか、それがしはやはり多く貰えるのなら」
 羽柴はその猿面を笑わせてそのうえで話した。
「それだけです」
「欲しいですか」
「欲が深いので」
 この言葉も笑って出した。
「ですから」
「それはご母堂や奥方の為ではないのですか」
「ははは、それもありますが」
「欲がですか」
「やはり強く」 
 それでというのだ。
「禄も宝もです」
「茶器もですか」
「貰えるならば」
 それならというのだ、これは官位もであるがそれについては言わなかった。言うと話がややこしくなりかねないと思ったからだ。
「それならです」
「そうでありますか」
「そこは島津殿と違いまする」 
 こうも言うのだった。
「どうしても」
「そうですか」
「いや、羽柴殿の欲は程よい位かと」
 顕如が笑って言ってきた、今も灰色の僧衣を着ている。袈裟も格ははあるが随分と古いものである。
「深くはです」
「ないですか」
「拙僧はそう思いまするぞ」
「それがしは自分ではそう思っていますが」
「真に欲深ならば気前が悪いものです」
 人に多く与えたりしないというのだ。
「羽柴殿は家臣の方々に褒美は弾みますな」
「ははは、そうした時は思いきりとです」 
 その様にというのだ。
「せよと昔から言われておるので」
「上様にですか」
「そして母上に」
 そうだというのだ。
「ですから」
「だからですか」
「はい、褒美はです」
「弾めと」
「民達には尚更です」
「気前よくですか」
「またその時の笑顔がよいので」
 褒美を多く与えられた時の家臣達や気前のいい政を前にした民達のそれがというのだ。
「ですから」
「それでなのですか」
「はい」
 まさにというのだ。
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