第0楽章〜無題〜
第0節「キャロルのバースデー2021」
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に、イザークは驚き目をぱちくりさせる。
「わたし、絶対ママより綺麗なレディになる!」
「へ?」
「ママより綺麗な人になって、パパみたいな優しい人と結婚する!それが今日から、わたしの目標!!」
「えっ?……えぇぇぇぇッ!?」
娘の宣言に、思わずイザークは間の抜けた声を出してしまう。
「キャロル、そういうのはまだ早いんじゃないか!?」
「え?そうかな?」
「第一、相手は見つかっているのかい?まさか、パパの知らないうちに!?」
「そんなわけないよ〜。これから見つけるの。優しくて、かっこよくて、それから〜……お料理出来る人だといいな」
「うぐっ……パパだって、頑張ってるんだけどなぁ……」
遠回しに料理下手を突っつかれ、少しだけ肩を落とすイザーク。
頼りない父の肩に、キャロルはそっと頭を預ける。
「ふふふ……でも、わたしと結婚する人も家事が出来たら、その分だけわたしも楽できるもん。そしたら、もっとパパと一緒に居られるでしょ?」
「キャロル……」
「だから……パパ。パパは、わたしを置いて行かないでよね……」
キャロルの方へと顔を向けるイザーク。
小さな頭を自分の肩に預ける娘の顔は、何処か寂しそうだった。
亡き母との思い出の場所で、母との想い出を語る。
それを娘へのプレゼントに選んだのは、”予感“があったから。
いつ来るのかは分からない。そうなる前に、せめて伝えておきたかったのだ。
最愛の娘に、最愛の妻の愛を。
「大丈夫だよ。パパは、いつでもキャロルと一緒だ」
「うん……」
だから父は、娘に誓う。
離Nァれていtぇも……Zぅttォ……Issyoダとo……
「……夢、か」
少女は玉座で目を覚まし、頬杖から顔を上げる。
見渡せば、周囲には幾つもの巨大な歯車。
そして玉座の後ろには、パイプオルガンのような建造物が天井へと向かい伸びていた。
「お目覚めですか、マスター」
声のする方を見上げると、黄色い衣装に身を包んだ人形が、少女を見下ろしていた。
「何やら、夢を見ておられたようですが……」
「いや、気にするな。特に異常はない」
「……そうですか。マスターがそう仰られるのなら」
そう言って人形は、玉座から一歩下がった。
(そうだ……オレにはもう、何も残ってはいない。あるのは忌まわしき想い出と、パパからの命題を完遂するという目的だけだッ!!それ以外の物など……オレには要らぬッ!!)
フラッシュバックする炎の記憶。
怒号と、涙と、焼けていく父の姿。
少女の心を塗り潰すのは、黒く、深く、暗い激情。
300年を費やした計画の日は、着々と近付いて来ていた。
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