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戦国異伝供書
第百二十六話 推挙その十三

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「左様じゃ、しかもな」
「しかも?」
「しかもといいますと」
「まだ何かありますか」
「織田殿はおそらく高橋殿をお助けしたい」
 今彼等が攻めている岩屋城の主である彼をというのだ。
「あれだけの方はな」
「失う訳にはいかぬ」
「失うことは天下の損失である」
「そうお考えですか」
「あの御仁はどうも優れた方をご自身の家臣にされ」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「天下の為に働いてもらう」
「そうお考えですか」
「あの方は」
「実際に降した家の者の命は奪わず」
 このことを言うのだった。
「天下の柱にされておるな」
「確かに、武田殿も上杉殿も」
「毛利殿もそうです」
「どの御仁も命を助けられそのお力を天下の政に使われています」
「それぞれの家の家臣の方々も」
「そうされています」
「言われてみますと」
 弟達も口々に答えた。
「だからですか」
「高橋殿もですか」
「助けられますか」
「そうお考えじゃ、だからより一層急いでな」
 そうしてというのだ。
「九州に来られる、だからな」
「我等もですな」
「岩屋城をすぐにでも攻め落とす」
「そうせねばなりませぬな」
「そうじゃ、急いでじゃ」
 だからこそ昼だけでなく夜も攻めてというのだ。
「攻め落とすぞ」
「我等はその高橋殿と戦っていますが」
「それでもですな」
「高橋殿のお命を奪うことになっても」
「攻めていくぞ」
 弟達に強い声で告げた。
「休む間もなく」
「それでは」
「そうしていきましょう」
「このまま」
「是非な」 
 こう言ってだった。
 義久は岩屋城を攻めさせた、彼は決めたことを決して変えまいと思いつつそのうえで自らも剣を抜いて戦の場に向かった。弟達と共に。


第百二十六話   完


                  2020・12・15
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