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戦国異伝供書
第百二十六話 推挙その十二

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「大軍とは思えぬか」
「かなりの速さです」
「それがです」
「かなりの速さで」
「それで、です」
「九州に迫っておるか、大軍の足は遅いものであるが」
 それがというのだ。
「速いか」
「道を整え海からもです」
「しかも織田殿の用兵は速いので」
「その為に」
「そうか、では尚更急がねばならぬな」
 義久は家臣達の言葉に深刻な顔で述べた。
「やはりな」
「ですな、城攻めを」
「そして織田家の軍勢が九州に入るより先にです」
「大宰府に入り」
「そして儀を行いますな」
「そうせねばな、何としても城をすぐに攻め落とすのじゃ」
 こう言ってだった。
 義久は城を攻めさせた、それはかなり激しいものであったが。
 一日攻めても城は陥ちなかった、義久は晩飯を食らいつつ弟達に告げた。
「夜もじゃ」
「攻めますな」
「この度は」
「そうしますな」
「こちらは数が多い」
 島津家の軍勢はというのだ。
「ならな」
「それならですな」
「その数を使い」
「疲れた兵は下がらせ新手を繰り出しますな」
「その様にしてな」 
 そしてというのだ。
「よいな」
「はい、夜もですな」
「即ち今も」
「攻めていきますな」
「休む間もなく攻めてな」
 そうしてというのだ。
「よいな」
「そして、ですな」
「何としてもですな」
「すぐに攻め落としますな」
「織田殿が九州に入られては遅い」
 もうその時にはというのだ。
「だからな」
「承知しております」
「それではです」
「夜も休みなく」
「攻めていく」
 そうするというのだ。
「そして長くかけずな」
「攻め落とし」
「そのうえで大宰府にも向かう」
「そうしますな」
「何度も言うが時は我等の味方ではない」
 このことが大きいことは義久が最もよくわかっていた、むしろ時は大友家そして彼等の言葉を聞いた織田家のものであると。
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