第三章 リベン珠
第29話 旅の終りと破壊の神:前編
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クラウンピースを見送った二人は、そこで互いに頷き合っていた。
「クラウンピースさん、行きましたね」
「そうですね。そして……」
「後は私達の最後の仕事をこなすまでですね」
「そういう事ね」
そのように二人は感慨深い心境に陥っていたのだった。
思い返せばこの旅は僅か二泊の短いものであった。だが、その中に含まれている内容は決して薄いものではないのである。
その中身の濃かった冒険が、もうすぐ終わろうとしているのだ。故に二人の気持ちが昂ってくるのも無理はないというものであろう。
そうした気持ちを二人は互いに肌で感じ合って、そしてその心は決まったようである。
「鈴仙さん、行きましょうか」
「そうですね、勇美さん」
こうして二人は最終決戦の地へと向かって行くのだった。
◇ ◇ ◇
そして、一行が辿り着いたのは周りを岩山に囲まれた行き止まりであった。
「行き止まり……? まさか道を間違えたって事は……そんな訳無いですよね」
「そういう事です」
おどけて見せる勇美に合わせながら、鈴仙は彼女の先に立つと、その手を横に翳すのであった。
それを合図にして事は起こったのである。行き止まり以外何も存在しないと思われていた空間に、裂け目が出現したのであった。
何もない所からの入り口の現出。幻想の世界に足を踏み入れてそれなりの時間を過ごした勇美であるが、やはりまだ現代の常識の意識が残る彼女には刺激の強い現象なのであった。
だが彼女は努めて気を強く持ちながら言った。
「……この先に目的の者がいるという事ですよね?」
「その通りです。では行きましょう」
そう言葉を交わした二人は、意を決して空間の裂け目の中にその身を投じたのであった。
そして、二人が今立っている所は……。
「海……ですか……?」
勇美のその言葉が示す通り、二人は海を目の前にしているのだった。そして、今立っている場所は砂浜である。
加えて、勇美はこういった光景に見覚えがあったのだ。
「私、このような場所以前にも見た気がします、確か依姫さんが霊夢さん達と対峙した時にですね……」
そうどこか懐かし気に呟く勇美に対して、鈴仙は諭すように言う。
「勇美さん、そこは『豊かの海』です。そして今私達がいる場所は『静かの海』。地上の者にとっては似ているかも知れませんが、違う所なのですよ」
「そっかあ……。あの時の依姫さんと同じ場所で戦えたら嬉しかったんだけどなぁ」
鈴仙に諭され、勇美はやや惜しいなという気持ちの下にそう言った。
そのような振る舞いをする勇美を見ながら鈴仙は思った。──この子は本当に依姫の事が好きなのだと。
確かに鈴仙は依姫の元から去る選択肢を取った。だが、今の勇美を見るのは悪い気はしなかったのであった。
そして、鈴
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