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MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第29話 旅の終りと破壊の神:前編
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仙はそんな純朴な振る舞いをする勇美に勇気づけられるような心持ちとなっていた。頼りない所があれど、勇美のそういう所に安心感を今まで覚えていたんだなと、鈴仙は改めて思い直したのである。
 そのような気持ちを心に秘めながら、鈴仙は諭すように勇美に言う。
「確かに残念ですね。でも、今は私達は私達で頑張りましょう」
 鈴仙にそう言われて、勇美は少し間を開けたものの、直ぐに笑顔になって、
「はい、二人で最後までやりましょう」
 と、快い返事をするのだった。
 そして、二人は砂浜を海沿いに歩く事暫く、目的の者だろう人物の人影を発見した。
『だろう』。その表現になる理由があったのである。その答えに繋がる言葉が鈴仙から紡ぎ出された。
「……誰?」
 それが答えであったのだ。今この場にいる者は鈴仙とて見知った存在ではなかったという事である。
 その者の容姿は金髪に赤い瞳と何処か近寄り難い印象を受けるものであった。それに加えて古代中国的な法衣、それも黒ずくめの代物を身に纏い、更に得体の知れなさに拍車を掛けている。
「鈴仙さんでも、この人を知らないのですか?」
 勇美はその事に驚くのだった。自分よりも月に精通した彼女が知らない存在となると、一体何者という事になるのだろうかと。
「ええ、初めて見る者ですね。一体彼女は……?」
 そう言い合う二人に対して、その者は静かに言葉を放ち始めたのであった。
「万策尽きて暴挙に出たとでも言うのだろうか。月の民のその様な姿を見たくは無かったですね。それに、地上の人間まで巻き込むとはね……」
「あなたは……」
 その者に対して、勇美は慎重な心持ちの下に聞く。それに対して彼女は丁寧な口調で言い始めた。
「私の名は純狐。月の民に仇なす仙霊である」
「純狐さん……? 仙霊……?」
 そう反芻するように言う勇美であったが、ここで彼女は身に覚えのある感覚に襲われたのである。それは、彼女にはとても馴染みのある感覚で、とても大切なものであった。
「要するに、あなたは神霊様という事ですね」
「そういう事になりますね」
 勇美の質問に、その者──純狐はさらりと答えてみせるのであった。
 これには勇美は驚愕を覚えるしかなかった。今まで幾度となく力を借りていた存在である神霊。それを今敵に回さないといけないという事なのだから。
 しかも、純狐から感じられる霊力には勇美には聞いた話からある仮説が出ていたのであった。
 まず、彼女から感じられるのは凄まじい憤怒の波動である。そして、彼女が纏う服は自身の名前の通りに九尾の狐を模した刺繍が施されている。
 この事から、彼女は憤怒の神『阿修羅』や、稲荷神である『ウカノミタマ』として地上で崇められている存在ではないかと勇美は推測するのだった。
 そのような有名所の神の原型となった存
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