第三章 リベン珠
第26話 ダサかっこいい的な何か:前編
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
月の洞窟を抜けてた先で二人に待っていたのは、開けた光景と大規模な谷であった。
その光景を前にして、二人は意を決して言い合う。
「深い谷ですけど……降りていかないと行けませんよね」
「そういう事です。目的の場所へ行くためには避けては通れませんよ」
このように、二人の意見は一致するのだった。目も眩むような深い谷であるが、ここを進まない事には『ある者』の元へは辿り着けないのである。
ここに二人の答えは決まったのだった。後はそれを行動に移すのみである。
二人は、谷への道のりである、細く危なっかしい道を辿りながら、谷を下へ下へと降りていったのである。
「ここは……危ないですね」
「ええ、でも引力は地上や月の都と比べて低いから、万が一の事があっても対処出来るでしょう」
「それはそうですね」
そう、勇美は今まで感じていた違和感の正体をここで確信に至るのだった。どうりで体が軽いと思っていたら、それは引力の問題であったという事なのであった。
慣れ親しんだ地上の引力とは違うもの。だが、今勇美はこの状況を楽しむ事にしたのだ。この身の軽さは中々経験出来ないが故に、味わっておかなければ損だというものであるからだ。
そうこうしている内に、二人は危なげながらも、どうにか無事に谷の底まで辿り着いたのであった。
「ふう……着きましたね」
「ええ、目的地まであと一息ですよ、頑張って下さい」
この後は鈴仙の案内の元に従って行けばいい。だから、これで一安心だろうと勇美は思うのだった。
だが、世の中というのはそううまくいかないものなのであった。勇美が肩の力を抜こうとしている所で、上空からこんな声が掛かって来たのだった。
「さあ、やっちゃいなさい!」
その声に勇美は「?」と首を傾げた。そしておもむろに上空へと顔を向けて……彼女は今の状況を知ってしまったのである。
上空には空を飛ぶ何者かがいた。そして、その者の右手に握られているのは。
「松明……?」
それが勇美が確認出来た事であった。その者の手には、月面にはどう考えても不釣り合いである、洞窟内等の暗闇を照らす道具である松明が握られていたのだった。
だが、それは今の状況においてメインの問題となる事ではなかったのだ。一番の問題……。それは上空には無数の妖精が飛び交っていた事である。
「あ……あれってさっき鈴仙さんが洞窟で倒した妖精さんのお仲間って事ですよね?」
「どうやらそのようですね」
勇美の指摘に、鈴仙も同意見だと示した。そして、ただそれらは空を飛んでいてくれるだけで済んでくれる事はないだろうと二人は直感したのだった。
空を飛ぶ何者かが、右手に持った松明の炎をたぎらせると、それを合図にしたかのように妖精達は、さも当然と言わんばかりに勇美達の元へ目掛けて飛び掛かって来たの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ