第三章 リベン珠
第25話 月面旅情
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鈴仙は閉口してしまった。だが、取り敢えずは相方の要望に応えてあげなくてはいけないだろう、そう思い鈴仙は行動を実行に移すのだった。
彼女は寸分の迷いもなく両手を使って勇美の頬をむにぃ〜っと引っ張ってあげたのだ。その間も鈴仙は「やっぱりこの子のほっぺたって柔らかくて気持ちがいい」等と感じていた。
「ほら勇美、これでいいですか?」
「ふぁい、あいがとふほざいまふ」
頬を引っ張られているが為に舌ったらずな口調で勇美はお礼を言った。そして鈴仙はその手を放すのだった。
「全く。勇美さんは私にこんな事をさせて、一体何が狙いなんですか?」
「あ、ごめんなさいね……」
そう言って謝っておいた勇美であったが、その後真意を伝えたのである。
「やっぱりほっぺたが痛かった訳ですから、これで今の現状が夢じゃないって事が分かりましたよ」
そう、勇美は今のこの時を未だににわかには現実の事だと受け止める事が出来ずにいたのである。それは些か往生際が悪いと言えよう。
だが、それも仕方のない事であろう。今彼女達は正真正銘の『月面』を歩いているのだから。
始めは勇美は、これから向かう所を『静かの海』と聞かされて、てっきり自分の見慣れた波の打ち付ける海岸に辿り着くものとばかり思っていたのである。
だが、いざ月の都から外へ出て目の前に広がっていたのは、テレビで目にするような宇宙空間を空に携えた無骨で無色な月面だったのである。
勿論、勇美は宇宙空間で人間が生きられない事を知っている。なのに今こうして自分は何故普通に歩いていられるのか疑問で仕方がなかったのである。
そんな勇美の疑問を察してくれたのだろう。ここで鈴仙はこう説明を始めるのだった。
「勇美さん、安心して下さい。私達は飲んだでしょう、あの『紺珠の薬』を。あれの力があればこうして人知を越えた事が出来るという訳ですよ」
「……何か、ご都合主義極まりないですね……」
「勇美さん、それは言いっこ無しですよ。かく言う私も納得出来てる訳じゃないんですから」
そう言い合って二人は、永琳の『何でもアリ』っぷりを改めて噛み締めながら苦笑いを向け合うのだった。
そうと決まれば勇美はもう、ここで腹を括るしかないと思った。こうなったらふっ切れて『楽しむ』しかないと彼女は心に決めるのだった。
「はい、もう私達は楽しんで行くしかありませんね♪」
「ええ、そういう事ですね♪」
ここに二人の心は決まったのだった。後はこの非現実的な旅を味わうしかないのである。
腹を括った勇美は強かったのだ。一面灰色の大地や、昔は月に映る兎だと思われていたクレーター、上空に移し出される宇宙空間……これらの不条理な光景の中を進んで行ける事を勇美は心弾ませながら満喫していったのであった。
そうこうしている内に、二人は月面の山岳地
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