第三章 リベン珠
第25話 月面旅情
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サグメの計らいで月の都の官邸で憩いの時を過ごして一夜を明けた勇美と鈴仙は、朝食も済ませて今正に出発の時を迎えようとしていた。彼女達は今、月の都の入り口にいる。
「サグメさん、何から何までありがとうございました」
『いえ、今の私に出来る事をさせてもらったまでですよ』
「私の方からもサグメ様、色々ありがとうございます」
勇美達のやり取りの中に鈴仙も入り込んで話す。そんな鈴仙に対してサグメは言葉を返した。
『鈴仙、あなもただの玉兎だと思っていたのに、立派に役目を果たしていますね』
「私も、自分に出来る事はしていこうと思っての事ですから」
サグメに言われて、鈴仙はそう言って胸を張った。対して、サグメは今一度勇美の方へと向き直ってから言う。
『今のあなた、いい目をしているわね』
そうサグメが指摘する通り、今の勇美の表情はすこぶる凛々しいものとなっていたのである。その理由は勇美の口から明らかとなる。
「ええ、今回の事で依姫さんが私のために随分無茶をしてくれていたって事が分かりましたからね。あの人のために今の自分が出来る事を精一杯したいって気持ちになっているんです」
その事は、サグメから今の月の都が何者かの手により、月の民にとって毒となる生命の力で覆われているのを勇美が知ってからであった。
それが示すように、月の民にとって生命や穢れは本来避けて過ごさねばならない代物なのだ。
だが、依姫はそれらの要素が蔓延する地上に存在する幻想郷にて、付きっ切りで勇美の面倒を見てくれていたという事を勇美は理解したのだ。
勇美はその事実を知って、自分の胸の内が色々な感情で溢れそうな心持ちとなったのだ。依姫に対して申し訳なさや、感謝の念で一杯となるのだった。
それが今の勇美の背中を熱く後押しする要因となっていた。そして、勇美は思うのである。
自分には何事からも逃げないような心の強さは持っていない。逃げ道は姑息に用意するような人間だと自身で理解しているのだ。
勿論その事を勇美自身は否定する気はなかった。それこそが自分らしさだと受け止めているからである。
だが、今回は月の騒動を解決するまでは勇美は自分は逃げないと心に決めたのであった。それこそが、今までの依姫に恩を返す事、そして依姫の下で成長していった自分自身に応える為であるという考えに勇美は至ったからなのだ。
その想いを胸に、勇美は今の無二の仲間である鈴仙と共に最後の決戦の地へと赴こうとしているのだ。
「それではサグメさん、行ってまいります」
『ええ、気を付けて行くのですよ、鈴仙もね』
「はい、サグメ様」
「勇美さん、鈴仙。無事に戻って来て下さいね」
ここに勇美、鈴仙、サグメ、イシンの心は一つになっていた。そして、勇美と鈴仙はここで旅立ちの時となるのである。
「それでは
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