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バリヨン
第四章

[8]前話
「かえって貰えるものは少ない」
「そうなりますか」
「そのことがわかりました、まあ悪いものを貰わなかっただけ」
「よしとされますか」
「そう考えています」
 こう泉に話した、そして。
 泉が尾崎にこのことを話すと尾崎はこう言った。
「それは前田さんが確かに欲が深くてもな」
「道を踏み外していないので」
「バリヨンも悪いものは与えなかった」
「松脂としたのですね」
「松脂は松脂でいいものだ」
「売れば儲かりますし」
「何かと使えるし魔除けでもある」
 こう泉に話した。
「あれはあれでいいものだ」
「はい、松脂は魔除けとして実にいいものです」
 泉は師に確かな声で答えた。
「あれは」
「妖怪を書いているとわかるな」
「よく」
「そうだ、若し前田さんが道を踏み外していたらな」
「松脂どころではないですね」
「果たしてどうなっていたか、だがあの人は確かに欲が深い」
 この欠点はあるというのだ。
「だからな」
「バリヨンも小判は渡さなかったのですね」
「人は人を見るが」
「妖怪もですね」
「そうだ、しかし松脂でも悪いと思わない前田さんはな」
 その彼はというと。
「それはそれで立派だな」
「左様ですね」
「儲ける手段にしてご自身でも欲が深いとわかっておられる」
「それはそれで、ですね」
「立派なことだ」
「人として」
「そう思う」 
 尾崎は泉に話した、そしてだった。
 泉に今度は前田を入れて三人で飲むことを提案した、泉も頷き前田も話を聞いて快諾した。明治の頃に実際にあった話である。


バリヨン   完


                2020・11・14
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