第一章
[2]次話
しごうちゃる
吉川好美は広島生まれである、今は神戸の学校に通っているが広島生まれの地はそのまま出ている。
それでだ、一学年上の先輩である国木田碧も彼女に寮で言った。
「ほんま広島の女じゃけえ」
「わしはですか」
「わらわ以上にじゃ」
こう言うのだった。
「こんなは広島の女じゃけえ」
「そうですか」
見れば背は一五七位で眼鏡をかけていて黒髪をおかっぱにしている、色白で楚々とした外見でスタイルは普通といったところだ。
「わしは」
「その喋り方も考え方ものう」
「そしてそのことはですか」
「ええことじゃ」
碧は笑って言った。
「そうじゃからこれからもな」
「広島の女で、ですか」
「いるんじゃ。わらわもそうするが」
「わしもですけんな」
「むしろわらわ以上にな。しかもこんなの生まれは広島市じゃな」
「はい」
まさにとだ、好美は答えた。
「そこで中学出るまで生まれて育っちょります」
「しかもカープファンじゃな」
「そして尊敬する人は毛利元就さんです」
「好物は牡蠣とお好み焼きじゃな」
「好きなお菓子は紅葉饅頭です」
「完璧じゃ」
まさにとだ、好美も言った。
「まさにわらわ以上にじゃ」
「わしは広島の女で」
「それを忘れん様に生きていくんじゃ、いいな」
「わかりました」
好美は碧に確かな声で頷いた、そうしてだった。
広島弁をそのままにしてそうして神戸での学園生活を送っていった、すると周りはそんな彼女にこう言った。
「本当に広島そのままだな」
「方言も食べものの好みもそのままで」
「もう完全に広島よね」
「何から何まで」
「やっぱり広島好きじゃ」
好美もこう答えた。
「そのことは事実じゃ」
「それでなんだな」
「神戸でもそのままでいってるのね」
「広島そのままで」
「食べものや野球の好みも」
「そうじゃ」
まさにという返事だった。
「それで悪いもんやないと思うしのう」
「けれどね」
ここでクラスメイトの一人がこう言った。
「しごうちゃるってどういう意味?」
「ああ、広島の言葉じゃな」
「好美ちゃんよくカープ負けた時に言うけれど」
「それは懲らしめるっていう意味じゃ」
好美はすぐに答えた、少女らしい外見と声で笑顔で話した。
「叩きのめすとか殺すとかのう」
「殺すって」
「色々使われるんじゃ」
笑顔のまま話した。
「広島ではのう」
「そうなのね」
「まあ物騒な言葉じゃが」
「殺すって意味でもあるから」
「結構使われるわ」
広島ではというのだ。
「特にこれといってな」
「変に思うことはないのね」
「そうじゃ」
「あとしあげたるはな」
好美は今度は自分から言った。
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