第四章
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「そうよ、お茶漬けの素があったわ」
「お茶漬けの素?」
「それがどうしたのよ」
「だからイタリアに行った時に持って行って」
こう両親に話した、父の修三は丸々太った大男だ、髪の毛がそろそろ薄くなりはじめていることを気にしている。
「それでご飯はサトウとかのね」
「あれか、電子レンジで温める」
「あれを持って行くの」
「後はお湯さえあればね」
それでというのだ。
「それでお碗もあれば完璧だから」
「まさかと思うけれど」
母は娘に怪訝な顔で問うた。
「イタリアでもなの」
「そう、毎日ね」
「お茶漬け食べるの」
「そうするわ」
そうした用意をしてというのだ。
「行くわ」
「そこまでするの」
「だから私はお茶漬けが大好きでね」
「一日一回は食べないと駄目だからなのね」
「だからね」
それ故にというのだ。
「そうするわ」
「呆れたわ、そこまでするのね」
「だからお茶漬け大好きだから」
理由はそれに尽きた。
「それでよ」
「わざわざそういうの持って行ってなのね」
「食べるわ、お箸だってね」
これもというのだ。
「持って行くわ」
「徹底しているわね」
「全てはお茶漬けの為よ」
かなは冷やしておいたご飯の上にお茶漬けの素をかけた、そうしてそこにお湯をかけてさらさらと食べた。
そして実際に旅行の時にだった。
かなはお茶漬けの素に某サトウのご飯、お碗に箸も持って行ってだった。
そのうえでイタリアに旅立った、そうして帰国してから母に笑顔で語った。
「いや、イタリア最高だったわ。噂以上に素敵な国ね」
「ローマもミラノも行ったのよね」
「ヴェネツィアもね。建物も景色も気候も素敵で」
そしてというのだ。
「食べものも美味しかったわ、ワインもね」
「未成年でしょ、まだ」
「あっちではいいから」
「それで飲んでたのね」
「兎に角最高だったわ」
「それでお茶漬けもよね」
「ええ、毎日一回ね」
こちらのことにもだ、かなは答えた。
「食べていたわ」
「やっぱりそうしていたのね」
「お陰でね」
お茶漬け、それを食べられてというのだ。
「ずっと調子よかったわ」
「実際にそうしたのね」
「ええ、毎日夜食やおやつみたいに食べていたの」
「何処までお茶漬け好きなのよ」
「骨の髄までよ、じゃあ今日の晩ご飯はね」
帰って色々度に持って行ったものを収めながらだ、かなは母に話した。
「お茶漬け食べるわ」
「帰ってもなのね」
「そう、やっぱりお茶漬けでしょ」
「やれやれね、じゃあ食べなさい」
「そうするわね」
母ににこりと笑って答えた、そうしてだった。
かなは実際に日本から帰ったその日もお茶漬けを食べた、鮭茶漬けであったがその茶漬けも実に美味かった。
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