第一章
[2]次話
アーノルド
アメリカに渡った野茂英雄はロサンゼルス=ドジャースにおいて活躍し忽ちのうちにアメリカだけでなく日本でも評判になった。
そのあまりにも独特なトルネード投法から繰り出されるストレートとフォークの威力は絶大でメジャーでも打てるバッターは少なかった。
「日本は野球はまだまだじゃないのか」
「こんな凄い選手がいたのか」
「よくこんなのがいたな」
「こいつはとんでもない奴だぞ」
メジャーの選手達も口々に言った、そして日本のファン達も喝采した。
「日本の選手がアメリカで活躍するなんて」
「信じられないな」
「本当にこんな選手が出るなんて」
「大リーグなんて夢だと思っていたのに」
「もう別天地だってな」
日本の野球より遥かに上の世界だと思っていたのだ。
「だから大リーグボールなんて出たんだよ」
「あの漫画でもな」
何と戦後日本の病理の象徴にして全人類の普遍の敵である読売ジャイアンツを舞台にした世にもおぞましい作品である、残念ながら戦後日本のプロ野球を舞台にした作品では長い間主人公の所属するチームはこのチームばかりであった、このことから戦後日本のモラルの崩壊がどれだけ深刻であったかわかる。
「そうだったしな」
「新のアニメで最後主人公メジャーに行ってたしな」
「ついでにあの糞親父も遂に死んで」
「そんな夢みたいな世界だったっていうのに」
「それが現実になったな」
「ああ、現実のものになったぞ」
日本の選手がメジャーで活躍する様になったというのだ。
「凄いことになったな」
「っていうか日本の選手もメジャーで通用するんだな」
「日本の野球もそんなにレベル低くないな」
「実際はそうなんだな」
このことも言うのだった、そして。
多くのファンがドジャースというチームにも注目する様になった。
「野茂がいるチームだしな」
「日本人を受け入れてくれたチームだしな」
「しかも活躍の場を与えてくれたし」
「感謝しないとな」
「本当にそうだな」
日本人の多くはこう言った、だが。
ある白人の老人が日本の居酒屋で話す彼等の言葉を聞いてその居酒屋で日本酒を飲みながら言った。
「いや、ドジャースは駄目だよ」
「あれっ、お爺さんアメリカ人ですか?」
「見たところそうですが」
「日本語流暢ですけれど」
「あちらの方ですさ」
「ああ、ニューヨークで生まれてな」
老人は日本の若者達に話した。顔は皺だらけで鼻は高く彫のある目の色は灰色で髪の毛はすっかり白くなっていて後ろに撫でつけている。背は一七七位で身体は八十を優に過ぎている位である。
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