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恋人は秘書
第六章

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「いい?ちゃんとお風呂に入って着替えて」
「歯を磨いてだね」
「寝てね」
 そうしろというのだ。
「いいわね」
「そこもだね」
「ちゃんとしてね」
「毎日してるよ、幾ら酔っても」
「そう、身体は奇麗にして」
「歯もだね」
「さもないと不潔だし虫歯とかにもなるから」
 だからだというのだ。
「気をつけてね」
「わかってるよ、それとね」
「それと?」
「いや、何かラーメンもう一玉食べたくなったから」
「注文するの」
「沙織ちゃんもそうする?」
「私はいいわ」
 沙織は義彦に微笑んで返した。
「けれど義彦君が注文したいならね」
「それならだね」
「注文したらいいわ。それでラーメンの後は」
「居酒屋行こうね」
「そこで今度は焼き鳥とか唐揚げね」
「それで飲もうね」
「二人でね」
 沙織は義彦に笑顔で応えた、そうしてだった。
 二人は屋台の後はだった。
 実際に居酒屋に行ってワインや焼酎を鶏肉料理と共に楽しんだ、それから二人で並んで歩いて自分達の部屋に戻ったが。
 その帰り道に義彦は沙織に尋ねた。
「いいかな」
「どうしたの?」
「いや、沙織ちゃん総帥さんに専属秘書にってね」
「お誘い受けたわ」
「そうだよね、けれどだね」
「だってね」
 沙織はよしひこに強い声で述べた。
「私は義彦君とずっと一緒にいたいから」
「だからだね」
「そうよ」
「だから断わったんだ」
「義彦君と一緒にいたいから」
 本音、それを出した。
「だからね」
「総帥さん直属の秘書となると」
 どうなるかとだ、義彦は語った。
「もうそれこそ将来は約束されているのに」
「グループのトップ企業の役員さんね」
「それになれるしお給料も」
「かなりのものね」
「そうなれるのに」
「地位やお金じゃないでしょ、人は」
「じゃあ何かな」
 沙織に微笑んで尋ねた。
「人は」
「愛よ」
 沙織は一言で答えた。
「愛こそがね」
「大事だっていうんだ」
「そう、だからね」
「僕と一緒にいたいって総帥さんに答えて」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「一緒にいるのよ」
「僕の秘書として」
「だって高校時代から一緒じゃない」
 その頃から付き合っているというのだ。
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