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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の2:天運重なり
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で宙にぶら下がった。完全なる隙であり、指を切落せば彼女は確実に落下してしまう。賊が剣を片手に近寄ろうとし、寸前で何かに足を殴られて前のめりに転倒する。

「ぶごぉっっ!!」

 膝を砕かれて男は顔を歪め、そして側頭部を更に殴られて気絶した。それは重量級の戦槌を両手で振るった慧卓の所業であり、顔を真っ赤に染めながら必死に振るった結果であった。どうやら彼は彼で別の部屋へと足を運んでいたらしく、入れ違いで盗賊が入ってきたという寸法だろう。彼はそのままの真っ赤な形相で窓から這い上がるパウリナに言う。

「ま、窓から直接乗り込むとか、あなた猿ですかっ!?」
「猿ってないでしょっ、猿って!!ちゃんと人間です!!人間の盗賊です!!」
「え、そうなの!?」
「あ、やばっ。そういや言ってなかったよーな・・・」

 途端、今まで聞いた以上に強烈な刃が噛み合う音が響いた。段々と狂乱が鎮まっていく中でその音はやけにはっきりとしたものであり、戦いの闘気が感じられるものであった。

「そろそろ、あいつ死ぬかな?」
「あいつって?」
「山賊の棟梁」
「ああ、そんなの居るんでしたっけ」

 パウリナに「そんなの」程度の存在にしか思われていない賊の棟梁は、思いもよらぬ苦戦を強いられていた。利き手が負傷して得意の得物が使えない事、そして相手が王国屈指の剣の使い手と知らなかった事が重なり、棟梁はどんどんと追い込まれている。

「ぐぅっ!?」

 右腕を剣が軽く掠めて血を飛ばす。痛みと疲労に顔を歪めながら棟梁は急ぎ足で最上階への階段を登る。建物は三階で終わりでは無く、屋上部分すらあるらしい。
 アリッサが険しき顔付きで距離を詰めていき、屋上へと身を出す。燦燦とした朝日が彼女を迎えて思わず目が眩み、瞬間、右手から襲い掛かる殺気に咄嗟に剣を振り抜いた。剣を弾かれて棟梁がたたらを踏み、柵に身体を預ける。

「ちっ」

 舌打ちをしながらアリッサが切り掛りるも男は素早き身のこなしでそれを避け、柵だけが切裂かれる。目に眩みを覚えたままであるが戦えなくは無い。アリッサは八双に剣を構えて冷静に歩を詰める。棟梁の男は半ば絶望に陥った様子であったが、それでも左手に剣を握ったまま後ずさり、油断が出来ぬ状況であった。

「ふぅ・・・」
「・・・っ」

 軽き息を吐く騎士に対して、賊は苦しそうなまでに顔を張り詰めさせており緊張が途切れていない。このまま押し切るのも一手であるが、下手な自棄を起こされて要らぬ反撃を受けるのも億劫である。それならばと、アリッサは次の一手を策定した。
 アリッサは明瞭なまでに構えを安定させて、上段からの一撃の到来を相手に意識させていく。先の先を捨てたのだ。棟梁もそれに釣られたか、剣を中段に構え、身体の横へ持っていく。俄かに刀身を斜
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