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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の2:天運重なり
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人に尋ねた。

「お前らはジョゼの兵だな?この騒ぎ、誰が起こしたと思う?」
「アリッサ殿でしょう。此方に来る途中、木に馬が止められておりましたゆえ」
「成程な。ではこの弓を射ったのも、彼女か」
「っていうか御主人も分かりましたか?この人達がジョゼさんの兵だって。そんなに分かりやすい顔してるんですか?」
「いや、してないが。だが館に居た者達の顔は全員覚えているからな」
「あ、御主人もですか?実は私もなんです、気が合いますねっ!」
「あ、ああ。そうだな・・・」

 妙に距離を詰めてくるパウリナに困惑するユミル。にたりとした笑みを変えずにパウリナは建物の壁を見詰め、ついで窓のとっかりに目を移らせていく。二階部分までは優に4・5メートルはあろうか。彼女はそれを見て小さく首肯しながら落ち着いた口調で言う。

「・・・兵士さんっ、ここまで連れてきてなんですけど、その子を連れて先に村に戻ってくれますか?」
「パウリナっ!お前も逃げろと言った筈だ!」
「その通りですぞ。武器も無いのに、どうやってこの状況に入っていくのです?」
「ありますよ、盗賊の技ってやつが」

 パウリナは一気に疾駆する。疾風の如き足運びで建物に一気に近寄り、それに辿り着く寸前で「たんたんっ」と、壁を一気に蹴り上る。  

『なっ!?』
「おぉ・・・すっごいなぁ・・・」

 垂直に跳躍したパウリナの左手、その三本の指が二階の窓のとっかりに引っ掛かっていた。顔を赤らめて渾身の力を奮い、残りの指と右手の指を引っ掛からせる。何とかして態勢を立て直そうとすると、彼女がぶら下がっていた窓を賊らしき男が突き破ってきた。

『あああああっっ!?!?』
「おぉっとっ!?」

 身体を反転させてそれを避ける。鈍い落下音が響く中、再び身体の態勢を安定させて、パウリナは叫んだ。

「ほら、御主人も!!」
「ちっ、リコを頼むぞっ!!」
「し、承知しました!!さぁっ、急ぐぞ!!」
「ユミルさんっ、有難う御座いました!!」

 兵らがリコを伴って森の中へと消えていき、ユミルが弓矢を手に再び建物へ吶喊していく。パウリナは窓ガラスの破片に気をつけながら身体を引っ張り挙げていき、愚痴を零した。

「ったくっ!みんなあたしが盗賊だって事知らないんじゃないのっ!?本当にさぁっ!!」
「・・・ほう、そうなのか?」
「えっ」

 砕かれた窓の内から、意外そうに目を丸くさせたアリッサの美顔が移っている。彼女の鋭い剣が男の頸を貫いており、命の水を流出させていた。

「あ、ああ、アリッサさんっっっ!?!?」
「ふんっ」

 男を蹴り倒しながら剣を引き抜くと、小さな赤い噴水が宙を待って部屋を穢した。アリッサは俄かに返り血を浴びた格好であり、銀鎧に赤い光が煌いていた。
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