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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の2:天運重なり
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「・・・遅いな」

 アリッサはそう呟く。眩い太陽が地平線から登っていき、慧卓らが向かっていった鬱蒼とした西の針葉樹林から闇を払う。深く繁る緑の木々は、今は茜色を帯びて淡く光っているようだ。だがアリッサが望むのはその光景ではない。
 約定を交したとおりならばこの時間、森から人影が三つ以上は現れる筈。だが影は一つたりとも存在せず、傍にいたキーラは不安を顕にしている。

「もう朝日が昇っているのに、まだ帰ってこないなんて・・・」
「・・・向こうで何かあったに違いない。矢張り危険だったかもしれんな」
「そうと分かっていながら、何故付いて行かなかったのですか?」
「私まで付いて行ったら、誰がお前達を守るんだ?再び賊が襲ってくるかも知れんぞ。それにだ、仮にエルフ側から救援が来たとして、お前達の身分を誰が証明する?それが証明できなくば彼らから信用は得られんぞ」

 反論の余地の無い正論である。キーラは無念げに俯き加減となり、口を噤んだ。その様子を一見してから、彼女を安心させるようにアリッサは言う。

「だがこの期に及んでは止むを得んだろう。事態は切迫しているようだからな。・・・私が彼らの救援に向かおう。兵を三人ほど借りる。後の事は頼むぞ」
「・・・私達も、武器を取る必要があるようですね」
「そういう事だ。ある程度の覚悟を決めてもらう必要がある。出来るな?」
「はいっ」

 力強い返事に一先ずの安心を得て、アリッサは出立前の兵士達の下へと向かう。馬は慧卓の愛馬であるベルの他、本来は馬車を牽引するだけの馬も使う。緊急措置であるため仕方の無い事である。

「いいか。お前らが乗るのは馬車を牽引する馬だ。緊急時とはいえ、無闇やたらと刺激したり、馬に傷をつけるなよ?」
『はっ!』
「よし、私が先導する。遅れを取るな」

 アリッサは自分には比較的懐いてくれるベルの気性に感謝しつつ、彼に跨って森の方へと馬首を向けた。そして黒い腹を蹴りつけて森へ向かって疾駆していく。彼女の後を追うように三つの騎馬が走っていき、朝焼けに赤く照らされる大地を駆っていく。
 ひしと覚悟を決めたキーラの下に、パウリナがちょろちょろと現れて得意げに言う。 

「キーラさん、剣の持ち方、教えましょうか?」
「いえ、私も貴族です。構え方と振り方くらいは存じております」
「あ、そうなの。・・・ねぇねぇリタさん、リタさんはーーー」
「お気遣いありがとう御座います。ですが、私も職業柄そのような事態に備えて、素人筋ではありますが、一通りの武芸を嗜んでおりますゆえ」
「・・・ふーん。みんな凄いのねぇ」

 どこか残念そうな色を匂わせながらパウリナは二人から離れて、気ままに歩いていく。折角ユミルから習った技術を生かせず、その上アリッサからさり気なく自分が戦
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