第四章
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「謝肉祭だ」
「その時にですか」
「そうだ」
まさにというのだ。
「その時にだ」
「公演ですか」
「では楽譜を見せてもらうか」
「途中でもいいですか」
「構わない」
メレッリはこう答えてだった。
実際に彼の楽譜を読んだ、そうしてこう言った。
「このまま続けてくれ」
「それでは」
「この作品は歴史に残る名作になる」
楽譜を読んでさらに確信した。
「君にあの台本を見せてよかった」
「そう言ってくれますか」
「やはり神の配剤だった」
あの時街で会ったことはというのだ、そしてだった。
ヴェルディが音楽を完成させると早速スカラ座として準備に入りそのうえで初演が為された。その初演はというと。
「これは凄いぞ」
「ここまでの作品ははじめてだ」
「ヴェルディはこんな作曲家だったか」
「素晴らしい作曲家じゃないか」
耳が肥えていることではウィーンにも負けていないミラノの観客達も思わず唸った。そうしてだった。
第一幕が終わった時から拍手が起こった、そして。
ある合唱曲でだ、観客達の興奮は頂点に達した。
「アンコールだ!」
「もう一度歌ってくれ!」
「その曲はもう一度だ!」
「そうしてくれ!」
観客の声は熱狂的ですらあった、これにはメレッリも会心の笑みだった。
「素晴らしいことじゃないか」
「スカラ座はアンコール禁止ですが」
「それでもですね」
「それをわかっていてとは」
「これはまた凄いですね」
「この作品の楽譜を見てあの曲は特に思った」
まさにというのだ。
「歴史に残るとな」
「確かに。この曲はです」
「この上演で特にいい曲ですね」
「リハーサルの時も思いました」
「この曲は白眉だと」
劇場の者達もメレッリに応えて言う。
「この作品の中で」
「間違いなく有名になる」
「そうした曲だと」
「そうだ、この曲は永遠に残ることになる」
こうまでだ、メレッリは言った。そして上演の後で。
この作品ナブッコはイタリア当時統一されていなかったこの半島で評判になった。そしてヴェルディの名声も一気に高まった。
半島の者達は口々に言った。
「作品全体がいいが」
「特にあの合唱曲がいい」
「まるで我々の為にある様な曲だ」
「今の我々にとってな」
半島にいる者達のというのだ。
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