冬はバーベキュー
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降りるのが少し早すぎた。
結果、コウスケと響は徒歩で上流に行くことになったのだが、その途中でバーベキュー地帯に差し当たってしまった。
家族連れ、学生、社会人。老若男女がそれぞれ肉をジュージュー焼いているなか、埃くさい器具を背負って登山をする。
「何この鍛錬! 師匠の特訓よりも軽く十倍はキツイよ!」
「みなまで言うな!」
「いや言いたくもなるよ! 私もお腹空いた! バーベキュー食べたい!」
「オレだって腹減ってんだよ!」
コウスケは半ば叫んだ。だが、他に道がないとは言え、この場所を通過するのは中々に苦行だった。
「くそう……今年中にレポート仕上げねえと単位がヤバいんだよ……最近禄に出てねえせえで課題たんまりだしよ……このままだとオレ留年の危機なんだよ……!」
「ずっとあちこちのバイトを掛け持ちで回ってたもんね」
「みなまで言うな! 金がねえんだよ、金が!」
コウスケは大きなため息をついた。
「ねえ、コウスケさん。前に実家から仕送りもらってるって言ってなかったっけ?」
「使わねえよ。あれは。オレはあくまで自立を条件に大学に通ってるからな。ばあちゃんが送ってるけど、あれは一切使わねえ」
「苦学生……」
だが、そんな目の前に、肉がジュージュー焼かれる音がどうしても防げない。思わず足が、バーベキュー会場に向かってしまう。
「コウスケさん!」
「は、いけねえいけねえ」
響の呼びかけに足を止めるが、すでにコウスケはバーベキュー会場の真ん中に来てしまった。
「ああ……」
「やべえ。響、どうする?」
「どうするもこうするも……」
腹の機嫌がどんどん悪くなる。やがて真っすぐ立てなくなったコウスケは、腹を抱えだした。
「ウェーイ!」
「っくっそおおおおおお!」
元気な掛け声に、コウスケは悲鳴を上げる。
「速く行くぞ! このままだと、オレらもバーベキューに染まっちまう!」
そう高らかに宣言したコウスケは、遺跡への足を急ぐ。そして。
「っぷはぁ! やっぱりビールはうめえ!」
バーベキューに染まった。
「……」
響は目を点にして、酒をグビグビと飲むコウスケを見つめていた。
結局バーベキューに負けた彼は、そのまま若い社会人たちに引き込まれ、バーベキューに参加した。そのまま響も同じように参加させられることになり、響に渡された紙皿には、串焼きが乗せられている。
「ほらほら。袖振り合うも他生の縁。いっぱい食べていきなって」
「ありがとうございます!」
もともと社交性のある性格の響とコウスケにおいて、遠慮というものは存在しない。話が乗ってしまえば、もうそこにいる者たちと旧知の仲だったかのようにともに食事に興じていた
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