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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(1)~故に元帥は招集した〜
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その巨大な艦隊はちょっとした骨董品を慌てて再整備したようなありさまである。

「そこを批判するのは筋ではないだろう」
 貴族当主でもある古参参謀の一人は苦笑する。
 熱心なのは強大な閨閥に属する【熱心な】貴族か回廊近くに所領を持ちそれを食い扶持の一つにする【野卑な】貴族、そして軍功を金で買う連中が雇用する【傭兵】くらいだ。この参謀も爵位もちであるが正規軍の役職から離れた私兵隊を私財と投じて鍛えたいかといえば否である。

「わざわざ出征を求めなければ批判されるまいよ」
 と小声で吐き捨てる若手参謀の足をシュターデンが蹴っ飛ばすのをミュッケンベルガー元帥は見て見ぬふりをした。
 年を食い貴族社会の一員としての分別を軍事的合理性の上に上乗りした者たちは年若い幕僚の”軍事的合理性に満ちた”呟きに諧謔を見出し、くすぐったさを感じつつ、重々しい権威を張り付けた顔を崩さず聞こえぬふりをして言葉を継ぐ。

「カイザーも最後に軍功の一つでも与えてやってくれ、とのことだ。相応の場を整えるのも御役目よ。説明を」

 シュターデンはミュッケンベルガーが先ほどの”注意”を見て見ぬふりをしたことに気づいていないかのようにいつもの講義をするかのような口調で作戦の説明を開始した。
「我々が戦場として選定しているのはヴァンフリート星系と叛徒どもが呼称する星系です」
「理由は何か」

「この星系の特徴は航宙管制が困難であること、小惑星帯などで大規模艦隊運用が妨げられることです。ですがこの地を押さえることには非常に大きな意義があります」
「逆に言えばこの星域の敵艦隊を掃討して足掛かりとなる拠点を築けば維持はそれほど難しくないこと。
そしてこの宙域の叛徒どもが逃げ込む拠点の一つであることです」

 よろしい、と艦隊の最高責任者は首肯する。
「拠点を築けば我々は叛徒攻略の大きな足掛かりを得ることになる。その役目をグリンメルスハウゼン子爵に担ってもらおうではないか」
 威風をまとった元帥の発言も空々しく響く。
 ――実際は面倒な老人を隔離するためのものだ。負けぬように戦うしかあるまい。
 そうした空気が満ちた総司令部は出征の決定に際し、意気は低く及び腰であった。
 
 それから半月後、幕僚陣による宮中政治と閨閥均衡、そして能力評価を複合した複雑極まりない評価基準による人事パズルの結果を片手に、ミュッケンベルガー元帥は一部予備軍を含めた銀河帝国宇宙軍にオーディンへ招集をかけた。



 オーディンでの会議からひと月ほどが過ぎた宇宙歴794年3月初頭、ヴァンフリート民主共和国首都要塞コロニー【マンデラ】が人民元帥府では国家安全保障会議が開かれていた。

 人民元帥以下、ほぼ全員が軍服をまとい、危機感に満ちた顔つきである。
「帝国軍の次
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