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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
こゝろ
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幽香が、あの今朝のように肉薄していた。そうして、彼女が上目で自分を見遣っていることに気が付いてから、ようやく、アリアに抱き締められていることを自覚した。

悪戯をする子供のように無邪気な、屈託のない笑みは、やはり彼女にお似合いなのだろう。それに当てられてしまっただけで、また例の感情が隆起してくることも、自覚していたから。
泰然を気取りながら、「まったくもう、心臓に悪いでしょう」と返すのが、精一杯だったのだ。


「だって、嬉しかったんだもん」


あの時と同じように、あの時と同じ声色で、アリアは零した。だから、そうであるからこそ、いま自分が抱いた感情も、あの時と同様だと微塵も疑わないのだ──『刹那に抱いた感情は、もう名前を知っている。そうして、この子は何処まで可愛らしいんだとさえ思ってしまった。窓硝子から見える、この黄昏時の五月空のように果てがなくて、あの揺蕩う千切れ雲のように奔放で、時折見せる常花のような仕草に──やはり何度も、惹かれているから。』



「ねぇ、そんなことより──アタシ、彩斗のこと、待っててあげたよ」


この文章に対する模範解答は、恐らく自分だけが知っていることだろう。あの黄昏時に交わした、軽躁な口約束が見え見えの伏線になっただけの、そんなものではあるのだけれど。
たった4文字の答えに、超過しすぎた字余りの想いを乗せに乗せながら、抱いている感情と覚悟とを改めて反芻させている。この口約束を交わしたのは、自分とアリアだけなのだから。


「……うん、ありがとう。ただいま(・・・・)
「えへへ、おかえりなさいっ」
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