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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
こゝろ
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、独り言ではあるけれども、夢の中の言葉でないことは、自分がいちばん分かり切っている。
彼がこの言葉で自殺の意志を抱いたのと同様に、自分もまた、別の意志を抱いたのだから。自分が、拾い上げて、変わらなくてはならない。護るべき者のために──。

そうして同時に、いま下した断案が、実にこの胸臆の靄を晴らすのに都合が良かったか。今朝から執拗なまでに渦巻いていた、単なる随喜と艱苦がごっちゃになった、堪らないほどに粘っこいのを、吐いても吐いても吐き切れぬ胸の悪さ──それが妙技に当てられたかのように、途端に馬鹿馬鹿しいほど何でもない、果ては清々しいものに変貌してしまった。

……ふと視線を他方に向けると、武偵校の校門が見えてくる。そういえばこの辺りで、セグウェイを追い払ったんだったか。あのグラウンドの方は、キンジの自転車が大破した辺りだろう。更に見遣ると、女子寮も分かった。その屋上から、アリアはパラグライダーで滑空してきたのだ。

強襲科、鑑識科、通信科、探偵科──各専門科の棟を横目に歩きながら、更にはお台場のモノレール駅の下を潜り抜けて、レンタルビデオ屋、コンビニの前を通っていく。そうしてようやく、自分たちの居住区であり本拠点、第3男子寮にまで行き着いた。

エントランスからエレベーターホールまでを一直線に向かう。指先で触れるように上りの矢印を押すと、大した間も無く扉は開かれた。最初から待機していたような素早さだった。
周囲に人が居ないのを確認してから、部屋のある階を行き先に指定する。《境界》で移動をこなしてしまうことも少なくはない中で、こうして勝手にエレベーターに連れられていくのは、何だか新鮮な心地がした。独特の浮遊感を、全身に感じていた。

『──ドアが開きます。──ドアが閉まります』
そんな見送りの機械音を背に受けながら、廊下を踏んだ歩を進めていく。いつもの光景を見ただけで、どうしてこんなに安堵してしまうのだろうか。これが一種の懐郷病(ホームシックネス)めいたものだとしたならば、やはり自分は、1人が嫌なのだろう。

色々と思いを巡らせているうちに、既に目の前には見慣れた扉があった。小さく深呼吸してから、人差し指と中指で軽く前髪を整えてみる。掴んだ扉の取手は、何故だか温かかった──、


「わっ!」


途端に聞こえたのは彼女の声だった。いつもよりも少し高めの、溜めに溜めて吐き出した、快哉と悪戯心が綯い交ぜになったような、可愛らしい声色。それが余韻を帯びる頃には、眼前の扉はとうに開き切っていた。そこから身を滑り出してきた彼女は、微塵の逡巡すら見せもせずに、その赤紫色の瞳をこちらに向けている。そうして一刹那の後に、徐に上半身が苦しくなった。


「ふふっ、どう? 驚いたでしょ?」


梔子のような
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