私はインフルエンサー・頭フサフサ陽之介
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後、急速充電によって蘇ったスマホでニュースを見たら、
『ユーチューバー・ハゲターを公園で逮捕』
と出ていた。彼は私と違って誰にもかくまってもらえなかったのだろう。そのあたりがインフルエンサーとしての格の違いか。
長い一日が終わる。
借りた寝間着で潜った布団の温かさが心地よい。
……そうだ。
眠りの手前でウトウトしていたら、一つのアイディアが浮かんだ。
彼女に手伝ってもらい、海外に飛ぼう。
海外ならインフルエンサー排除法のようなくだらない法律は存在しないはずだ。
彼女の人脈も使える。逃亡を手助けしてくれる人はすぐに見つかるだろう。
それこそプライベートジェットの荷物に紛れるかたちなど、どんな手段でもいい。日本にいなければインフルエンサーとして活動を続けられる。
もっと早くそうしておくべきだったかもしれない。私はもともと日本国内にとどまる器ではない。
よし。明日にでも彼女に話をしよう。
才色兼備の彼女とともに日本脱出だ。
私はインフルエンサー、頭フサフサ陽之介。
* * *
朝を迎えた。
隣を見たら、彼女はいなかった。
彼女は朝型で、朝活をやっていると言っていたから、自室で何かやっているのかもしれない。
起き上がると、借りた枕に大量の髪がついていることに気づいた。
洗面所に行って鏡を見ると、後頭部と側頭部に大きめの円形脱毛があった。
急なストレスで髪が抜けたのだろう。まあそのうち復活するか。
「そう、復活する。私はインフルエンサー・頭フサフサ陽之介。この身一つあれば稼げる」
鏡を見ながら独り言。そして頬を両手で軽く叩いた。
すると、その鏡に、彼女が映った。
笑ってはいなかった。
「そうね。生きていれば、ね」
その声に対し振り返った瞬間に。
みぞおちに、激痛――。
「なぜ……だ……?」
自分の胸から、包丁の柄が生えていた。
「だってあなた、『自分の運気を下げてくる人は恋人でも距離を置きましょう』って前にインスタライブで言ってなかった? 私はあなたの言うとおりにするだけよ。落ち目のあなたと一緒にいて、わたしになんのメリットがあるの?」
彼女はここでニッコリと笑った。
「わたし、今日これから海外に飛ぶの。海外のインフルエンサーからぜひ来てくれないかって言われてね。めでたく交際スタートってわけ」
白い手が、静かに包丁の柄を引き抜く。
さらなる激痛とともに、赤い血が噴き出した。
自分より低いはずの彼女の背が、どんどん高くなっている。
否、こちらの体が崩れ落ちているのだ。
「さようなら。ダメな人≠ウん」
完全に床に沈んだ体を包
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