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私はインフルエンサー・頭フサフサ陽之介
私はインフルエンサー・頭フサフサ陽之介
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ニタを見た。

 警察……!

 もう来てしまったのか。
 自分も任意同行、そしてそのまま警察署で緊急逮捕の流れだろうか?

 ひとまず留守を演出しよう。
 ここは一階。ベランダから逃げられる。
 玄関から靴を取り、財布を持つと、裏の駐車場へと逃げ出した。

 逮捕されれば、今まで積み重ねてきたものが崩れ去ってしまう。それどころか人生終了かもしれない。

 そんなことがあってはならない。
 私はインフルエンサー、頭フサフサ陽之介。



 * * *



 夜道を、ひたすら走る。
 駅前から伸びでいる大通りに出た。

 自分は近いうちに逮捕状を取られてしまう可能性がある。
 まずは弁護士か。
 最近は接点がないが、連絡が取れる弁護士がいる。確か都内のそう遠くないところに住んでいるはずだ。

 彼はもともと弁護士ユーチューバー・ミノ田部として活動していた人間。
 自分と同時期に動画配信を始めていたのでコラボ企画などもしており、連絡先を交換する程度には仲が良かった。
 しかも都合のよいことに、彼はその後チャンネル登録者数が伸び悩み、かなり前にユーチューバーを引退。よって彼が逮捕済みであることはないと思われた。

 やはり持つべきものは人脈だな、と思う。
 逮捕されそうなときはまず弁護士に相談、とよく言われる。
 死刑の回避方法はもちろん、社会的なダメージが一番少なくなる方法を指南してもらえるだろう。

 私のユーチューブは登録者数五百万人。百万程度のハゲターよりも豊富な人脈がある。変な法律ができていようとも、なんとかなるかもしれない。

 インターネットブラウザを消し、彼に電話をかける。
 出ない。

 スマホの近くにいないのか? と、ラインでメッセージを送る。
 すると、『何かな』という返事が即時に来た。スマホの近くにはいたが、通話できない環境ということだろうか。

『インフルエンサー排除法のせいで近々逮捕状が出るかもしれない。相談したいのだが会えないか?』

 またすぐに返事が来た。

『お断りするよ』
『なぜだ?』
『君、弁護しようがないくらい今もインフルエンサーでしょ』
『そうであっても何かないのか? 死刑を免れるために今やっておくこととか、逮捕じゃなくて在宅起訴に持っていく方法とか。他にも何か時間を稼げる方法とか。弁護士なら何か考えられるだろう。相談料ならいくらでも払える』

 少し、間があった。
 そしてここから、彼のメッセージが矢継ぎ早に繰り出されていった。

『それでもお断りさ。君と仲がいいと思われて、とばっちりを食らったら嫌だからね』
『君が前に動画で言ってたでしょ? 「友人とはしょせん他人。自分を犠牲にして尽くす必要はありませ
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