第8話『交戦』
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仲間がいたのか。 いつのまに回り込まれていたのか……いや、違う。
自慢ではないが、玲人は昔から周囲の状況を把握するのが得意だった。 それに加えて、今は十分に警戒もしていた。 そんな状況で簡単に背後を取られる事はないだろう。
「何者……だ、……はぁ?」
刃の持ち主に視線を向けると、そこに立っていたのは体の朽ち果てた鎧武者だった。
意味がわからない。 一体いつからそこにいたのか、なぜ武装しているのか、なぜ腐っているのに動けるのか。
男の方に視線を戻すと、それらの疑問は一瞬で消え去る。
男の陰から、鎧武者が次々と溢れ出ているからだ。 通常ではあり得ない現象、詳しい事はわからないがつまり……
「お前、製鉄師か」
「……」
「登録証は見えないな。モグリがこんな田舎に何の用だ?」
「……」
これらの鎧武者たちは男の鉄脈術による物だと考えるのが自然だろう。
この国では、製鉄師は国から支給される腕輪状の登録証で管理されている。 それは玲人を始めとした製鉄師候補生であっても例外ではない。
しかし、目の前の男の腕に登録証のようなものは認められない。 つまりこの男は管理外で鉄脈術を私的に利用するモグリ……即ち、魔鉄犯罪者。
ケースから大太刀を取り出し鞘から抜き払う。 1、2、……武者は3体、男を入れると計4対1か。
「現行犯逮捕ってのは一般人でも出来るんだっけな。 怪我したくないから大人しくしてくれるとありがたいんだが」
「……邪魔をするな」
男が合図すると一斉に武者が襲い掛かってくる。 ……が、遅い。
振り下ろされる凶刃の隙間を縫ってがら空きの胴に刀を叩き込む。 勢いそのままに振り抜くと、武者は簡単に吹き飛んで後ろの仲間を巻き込んで倒れ伏した。
玲人の通う聖晶学園は正式名を聖晶製鉄師養成学園という。 つまり、兵士を育てる学校なのだ。 当然、戦闘訓練の授業も取り込まれている。
とはいえ実戦は初めてなのだが、武者たちの緩慢な動きなら捌き、躱すのは容易なことだった。
問題があるとすれば……
「……やっぱ刃が通らないか……」
現代における戦闘の大前提。 ”製鉄師は製鉄師にしか倒せない”。
詳しい理屈はここでは割愛するが、要するに鉄脈術に対抗出来る手段は鉄脈術だけだという話だ。 現に今も、武者を突き飛ばすことは出来てもその胴を切り裂くまでには至らない。
硬い……というわけではない。 刃が体に食い込む前に見えない力で押し返されるような手ごたえだ。
「これじゃ埒があかないな……」
「こっちのセリフだ。 製鉄師でもないのによく耐える」
ただ、どうも相手も攻めあぐねている様子。いくらのろまとはいえ、こちらの攻撃が通用しない以上数で押せばどうなるかなんてのは目に見えて
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