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安堵の涙
第一章

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                安堵の涙
保護施設にいる十八歳の雄のダッグスフントのムニェカは目が見えなくなっている、高齢で家族に捨てられたうえにそうなっていた。
 これまで一緒だった家族に捨てられ彼はそれだけでも不安だった、そしてそのうえで目も見えなくなってだった。
 いつも不安で仕方なかった、だから施設のスタッフ達も彼をいつも気にかけていた。
「歳を取ったから捨てるなんて」
「一生いるものなのに」
「捨てられた犬の気持ちになって欲しい」
「家族に捨てられることがどれだけ辛いか」
「しかも目も見えなくなって」
 そうなてっというのだ。
「余計に辛いだろうな」
「誰だって目が見えないと辛い」
「それがどれだけ怖いことか」
「家族に捨てられて一匹だけになって目も見えなくて」
「あの子はどれだけ不安だろう」
「だからいつも怯えて震えてますね」
 見ればそうなっていた、高齢であまり動けなくなっていることもあってトイレに行く以外は常に寝そべっているが。
 小さくなって震えている、寝ていてもその表情は暗い。誰が見てもムニュカは不安と悲しみに心を支配されていた。
 だがその彼を見て施設のスタッフの一人エレイン=マクレガー金髪の癖のある短い髪の毛の三十代の青い目の女性が彼を見ながら同僚達に話した。
「あの子抱き締めたらどうでしょうか、そしていつも温かい声をかけたら」
「不安でなくなりますか」
「あんなに怯えて悲しくなくなりますか」
「そうなりますか」
「そうなるのではないでしょうか」
 こう言うのだった。
「どうでしょうか」
「やってみますか」
「実際あのままではあの子も気の毒です」
「いつも悲しくて不安なら」
「本当に辛いままですから」
「やってみます」
 エレインは自分のことを言ってだった。
 そうして実際に彼の傍まで行ってだった、そっと抱き上げて優しく抱き締めて耳元で優しい声をかけた。そうしたことを繰り返していると。
「ワン・・・・・・」
「あっ、ほっとした顔になりましたね」
「これまで悲しい顔ばかりだったのに」
「穏やかな顔になりましたね」
「不安そうだったのに」
「落ち着いていますね」
「それに」
 一人がムニェカの目を見た、すると。
 その目に涙があった、皆その涙を見てエレインに話した。
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