第二章
[8]前話
「心配だよ」
「密猟者もいますし」
「本当に心配ですよね」
「この保護区でも」
「全くだよ。幸せだといいけれどね」
こうした話をしながらだった。
先生は森の中を歩いて状況を確認した、時折ゴリラも見たが彼等は無事だった。そしてマイクロチップでそれぞれの個体を確認していたが。
クウィビィもいた、彼は無事で先生はスタッフ達と共に彼がいる場所に歩いていった、するとその彼に会ったが。
「ウホ」
「?クブィシィ僕のことを覚えているのか」
「ウホ」
クビィシィは笑顔になった、そうして先生に親愛の仕草もしていった。それはゴリラ特有のもので彼も彼を育てている時によく見たものだった。
クビィシィは先生にその仕草をしてから傍にいたもう一匹のゴリラを呼んで先生の前に連れてきた。先生はそのゴリラを見てわかった。
「君の奥さんか」
「ウホッ」
クビィシィはまた笑顔になった、もうすっかり大人になっているがその仕草は五年前のものであった。
そして先生にまた親愛の仕草をした、すると先生もだった。
クビィシィに心からの笑顔を向けた、そうして彼に言った。
「これからも奥さんと仲良くね」
「ウホウホ」
「ウホホ」
クビィシィは今度は彼の妻と共に笑顔になった、そうして夫婦で親愛の仕草をした。先生はその彼等にまた会おうと言って。
手を振って別れた、するとクビィシィは一瞬悲しい顔になった。だが先生の仕草を真似て妻と共に手を振った。
クビィシィと別れた後先生は周りに話した。
「この通りだよ」
「はい、ゴリラは大人しくて」
「そして優しくて賢いです」
「そうした生きものですね」
「下手な人間よりずっと素晴らしいよ」
こうまで話した。
「本当にね」
「その通りですね」
「クビィシィを見てもわかりますね」
「五年経っても先生を覚えてくれていて」
「今も慕ってくれていて」
「素晴らしいですね」
「あの生きものの素晴らしさも伝えたいよ」
財団の目標である生態系ひいては環境を守るだけでなくというのだ。
「是非ね」
「そうですよね」
「ゴリラは素晴らしい生きものです」
「皆に知って欲しいですね」
「皆にね。その為にも努力するよ」
先生はそのことを誓った、そうしてクビィシィがいた場所を振り返った。そこにはもう彼はいないがそこに確かに彼と彼の幸せを感じた。またそこに行って彼に会おうとも思いつつ今はその場を後にした。再会を喜びながら。
五年後の感動の再会 完
2021・2・24
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