第三章 リベン珠
第15話 THE LUST 4/4
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彼に指令を送る。
「さあ、ブラックカイザー、やっちゃって。【衣鳳「疾火の剛腕」】!」
その指令を聞くや否や、彼は全身炎に包まれた状態のその腕を一気に眼前へと突き出したのだ。
たった、これだけの動作であった。だというのに、この後に起こった事は計り知れなかった。
ブラックカイザーのその腕の一振りにより、そこから凄まじい炎と熱と衝撃の奔流が迸ったのである。それが向かった先は他でもない、濁流の吐息である。
「何をするかと思えば……。水には炎は」
相性が悪い。その言葉を紡ぐ猶予はドレミーには与えられなかったようだ。
何故なら、その炎の波動は濁流に突き進んだと思ったら──それを一気に蒸発させてしまったのだから。
激しい水の流れをこのように呆気なく無力化してしまう辺り、今勇美が放ったスペルの威力の凄まじさが垣間見えるというものだろう。
そして、濁流を飲み込んで消滅させた高熱のエネルギーの行き着く場所は一つしかないだろう。
「う……うわぁ……!!」
そう、今し方驚愕の声を上げたドレミー本人なのであった。そして、彼女を炎は容赦なく包み込んでいった。
だが、彼女もこのような大それた攻撃を許しはしないのだ。二度に渡って彼女を護って来たスライムのシールドをドレミーは再度展開する。
「くっ!」
そこを炎がすっぽりと包み込み、激しい爆炎が周辺に迸った。
そして、炎が止むと視界が晴れてくる。そこにあったのは。
「はあ……はあ……」
この炎に包まれてもドレミーは倒れずにいたのだった。その事からも彼女の実力というものが窺えるだろう。
だが、彼女の姿は痛々しかった。自慢のネグリジェは所々が焼けただれてボロボロになっており、彼女自身も疲弊している事実は隠せないだろう。
加えて、周りの光景も豹変していた。先程の炎の波動の熱により、無数の歯車はほとんどが半解してグニャリと歪な形となってしまっていたのである。
もう、このフィールドは使い物にならない。そうドレミーは判断し、この『紺色の狂夢』の解除を行った。たちどころに辺りは元の見えない足場で構成される空間へと戻る。
「ふう……やっと元の場所に戻って来ましたね」
「ええ、あの空間での戦闘は私達にとって不利でしたからね」
二人は口々にそう言い合う。そして、その不利な状況から脱せた今がチャンスではないかと勇美は言う。
「でも、敵の手負いの獣状態です。ですから油断はしない事ですね」
「そうですね。それと私のこの力ももう限界みたいですよ」
そう勇美が言うと、炎の機械騎士となっていたブラックカイザーは淡い光に包まれたかと思うと、その光を辺りに振りまいてその姿を解除したのだった。
「ごめんなさいね鈴仙さん。ブラックカイザーの力は強大ですから、長い間継続させておく事が出来ないのです
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