第三章 リベン珠
第14話 THE LUST 3/4
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っていますよ、鈴仙さん」
月はあなたの十八番ですからね、そう言って勇美は鈴仙の忠告の言葉を素直に受け止めたのである。
そんな二人に対してドレミーは言葉を掛けて来る。
「お二人ともいい心構えですよ。でも、心得だけでは対処出来ないって事をこれから分からせてあげましょう」
そう言うとドレミーはまたもパチンと指を鳴らしたのである。その芸当にやはり勇美は「いいなぁ〜」と羨んでしまう。
その勇美のスケールの小さい渇望はさておき、今の合図を皮切りに事は起こっていった。
それは一瞬であった。辺りに不可視の波動が広がったかと思うと、その光景は今までとは一気に豹変してしまったのである。
「これは……」
勇美は余りの事態に呆気に取られてしまうのだった。
彼女が目を奪われる程の光景。その詳細は、辺り一面が無数の大きな歯車で出来た要塞の内部のような場所に変貌していたのである。そして、その要塞の全体の色彩は濃厚な紺色で統一されていた事も今の状況が異様な事を物語っているだろう。
「恐らく、月の重要機関の内部もこうなっている事でしょうね」
鈴仙は感慨深くそう語る。かつては月に住んでいた身であるが故にそれを構成するものについてはある程度認識があるのだった。
だが、彼女は月の民ではなく玉兎である。実際にそのような重要機関に立ち入った事はなく、あくまで話に聞いた情報からそう推測するしか出来ないのである。
そして、勇美はこの常軌を逸した光景にも、どこか懐かしさを感じているのだった。その理由は。
「……まるで、紫さんと戦った時みたいですねぇ……」
勇美は緊張感を感じながらも、そうしみじみと呟くのだった。それだけ勇美が紫と戦った事は彼女にとって意味のある経験だったからである。
かつて八雲紫は勇美との弾幕ごっこで別の時間軸上の荒廃した未来の世界を創り出して彼女と戦ったのである。正に勇美にとって今の状況はその時以来の刺激的な体感なのであった。
そして、気付けば勇美は……。
「勇美さん、この状況で笑っているんですか?」
鈴仙のその指摘通り、勇美の顔には隠し切れない笑みが浮かび上がっていたのである。この緊迫した状況の中にありながら。
「あ、ごめんなさい鈴仙さん。私笑っていました?」
「ええ、でも何でこの状況で?」
「いえね、私の大切な人と戦った時もこんなぶっ飛んだ状況になっていましたから、その時みたいでつい嬉しくなってしまいましてね……」
勇美はポリポリと頬を掻きながら照れくさそうに弁明する。
その相方の様相に少し驚く鈴仙。だが、今は好都合と考えるべきだろう。
「勇美さん、頼りにしていますよ」
「はい、任されました♪」
普段頼りない勇美であったが、ここにきて彼女はとても心強く鈴仙に映るのだった。
それを当然ドレミーは訝
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