暁 〜小説投稿サイト〜
MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第13話 THE LUST 2/4
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「勇美さん、それは体質だから仕方ないですよ」
 項垂れる勇美に、鈴仙はまるで哀れな者を見るかのような眼差しで以て慰めるのだった。
 だが、そのようなしょうもないコントが繰り広げられている最中であったが、確実に勇美のスペルは発動されていたのだった。
 突如として、透明な見えない床が破損し、そこから無数の触手がせり出して来たのである。しかも、それはただの触手ではなかったのだ。
 その触手は、何と水で出来ていたのだ。本来液体で形を持たない水が植物の触手のような形態を取っている。この光景は目を引くものであろう。
 そして、それを見たドレミーは勇美が『それを繰り出した』真意を察して驚愕する事となる。
「まさか……!」
「その読みは正しいですよ♪」
 そう勇美が言うと同時に、見えない地面を突き破った触手は這うように地を突き進んで行ったのである。そして、狙うは当然ドレミーが駆る赤き炎の馬の足下であった。
「しまっ……!」
 ドレミーは馬にそれから逃げるように指示を出し、素早く走り出し触手を振り切るかのように奔走する。
 だが、それは無駄な足掻きなのであった。触手は地面を走り、そして当然馬の移動は地を駆けるものなのだ。天馬──ペガサスでもない限り空を飛ぶなんて芸当は出来ないだろう。
 激しい水飛沫を上げながら触手は逃げ回る赤馬へと差し迫り、とうとうその身を捉える事に成功するのだった。
 火が水を浴びれば……その答えは正に火を見るより明らかであろう。いくら赤馬が夢の世界の炎から生み出されたとは言え炎は炎。故に炎の宿命によりその身をみるみる内に水にかき消されていったのだった。
 そして、赤馬は完全にその身を触手の水に飲まれて失われてしまったのである。
「くっ……」
 苦悶の声を苦々しく出しながらも、宙で体制を整えるドレミー。その判断力はさすがは夢の世界の支配者を務める者といった所であろうか。
 とうとう床に足を付けてしまう事になったドレミー。つまり、俊足の移動手段を失い人型の移動速度に甘んじる事となった訳である。
 その好機を逃す勇美ではなかった。
「ドレミーさん、行きますよ。触手達よ、彼女も捉えちゃいなさい♪」
 勇美の言葉に呼応するかのように触手はドレミーへと差し迫っていった。だが、ドレミーもそう易々とはやらせはしなかったようだ。
「悪夢の馬は倒されましたが、余り調子に乗らない事ですよ」
 そう言いながら彼女は新たなるスペルカードを取り出す。
「【夢符「藍色の愁三重夢」】!」
 その宣言の後、彼女は右手を眼前に翳すとそこに藍色の如何にも冷たそうな色のエネルギーが集まっていき、徐々にある形に造り上げられていく。その形は……。
「『銃』……?」
 勇美が呟く通り、ドレミーの手には銃の形となったエネルギーが握られていたのだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ