第三章 リベン珠
第12話 THE LUST 1/4
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ドレミーのその態度は実に包容力のある大らかなものであった。だが、ここで彼女は「でも……」と付け加える。
「ですが油断しない事ですよ。もう私はスペル発動をしたのですからね♪」
ドレミーがそう言うのと同時であった。彼女の体からスペル名の通り、正に赤い炎が吹き出して来たのである。
「来るっ!」
そう言って早速始まった攻撃に対して勇美は身構えるが、ここで何かおかしい事に気付くのだった。
(あれっ……?)
思わず首を傾げる勇美。彼女がそうするのも無理はないだろう。何せ自分達に向かって来るだろうと思われた炎の奔流は、いつまで経っても一向にこちらに来なかったのだから。
代わりに放たれた炎はドレミーの隣に、コップに注がれる水の如くどんどん堆積していった。
「何が起こるの……?」
その不条理な光景に、勇美はただただ目を見張るしかなかった。
「量はこれ位でいいですね」
一頻り炎を吹き出して固めたドレミーはおもむろにそう言うと、「はっ!」っと一声掛け声を入れる。するとそれは起こった。
ドレミーのその一声に呼応するように、炎はウネウネと蠢き始め、不定形だった状態から徐々にその形を作っていったのである。
そして、その炎の工作は完了する事となる。つまり、既に明確な形をそれは持っていたのだった。
その形は……。
「お馬さん……?」
勇美がそう呟いた通り、炎は形を変えて燃え盛る赤い馬の姿へと変貌していた。
勇美の呟きに対してドレミーはやんわりと微笑みながら、丁寧に説明していった。
「悪夢とは英語でナイトメア。そして、メアとは雌馬の事。なのでちょっとした洒落でこのようなスペルを作って見ました」
「ほええ〜……」
ドレミーの語る所の真意に目を向けながら勇美は呆気に取られてしまっていた。
その理由は、このように『洒落』で今のような芸当が出来てしまった事にある。
さすがはここは夢の世界と言うべきか。いや、真に凄いのはその世界の力を完全に操るドレミーにあると言えよう。
鈴仙が言った通りである。このように獏は夢の世界で一番危険な生き物のようだ。
(だけど……)
だからと言って負ける訳にはいかない。幻想郷や綿月姉妹を護る為、そして勇美自身が負ける事を嫌うからである。
勇美がそうこう考えている間も、その赤き馬は鼻息を荒げ地面を蹄で蹴りながら臨戦体勢に入っていたが、それはドレミーの手によって終わりを迎える事となる。
「さあ行きなさい、私の可愛い炎の馬よ!」
いよいよを以て、ドレミーは自分の生み出したエネルギー体の遣いへと命令を下したのである。そして、その命令に応える形で赤き馬は勇ましく嘶いたのだった。
そして、その赤き馬は一頻り嘶いた後、如何にも準備万端といった生き生きとした様相となり──とうとう勇美達へとその身
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