第三章 リベン珠
第11話 イサミ・クロガネと秘密の通路:後編
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いよいよ二人は玉兎達の秘密の通路へ入り、今の不可思議極まりない空間を歩を進めていた。
これまた奇妙な状況であった。何せ何もない筈の空間なのに、歩くとコツコツと確かな足音が辺りに響いていったのだから。
まるで、夜の学校の校舎内を歩いているかのように錯覚してしまう程である。そんな今の状態に勇美は不気味さと共に好奇心も刺激されていた。
「あはは、歩いているだけで、何だか楽しいです」
「勇美さん、これは遊びではないんですよ」
浮かれる勇美を鈴仙はそう嗜める。そう、遊びではないのだ。これから自分達は今何かが起こっている月へ行き、原因を突き止めて解決しなければいけないのだ。
だが、勇美は弾む心を中々静められはしなかった。
「そうは言ってもですね鈴仙さん。宇宙に進出した女子中学生って、多分私が初めてじゃないですか? そう思うとウキウキしてしまうってものですよ」
「あ、言われてみればそうですね……」
そう勇美の言い分を聞いて、鈴仙は納得するのだった。──誰だって、自分が初めてだという領域に足を踏み入れるのは気持ちが高揚するものだろうと。
(でも……)
だが、そこまで考えて鈴仙は思い直すのだった。物事には必ず例外があるものだと。
それは、何を隠そう鈴仙も『初めて地上に逃げた兎』であったからだ。そして、それが自分が初めてでも彼女は嬉しくはなかったのだった。
そのようにして思考の泥沼に捕らえられそうになる鈴仙。だが、彼女はそうなる前に心機一転する事とする。そう、自分はもう『地上の』兎となったのだから。
鈴仙がそのような葛藤をしている中でも勇美は上機嫌であった。彼女はこの『宇宙旅行』に心が弾みっぱなしなのであった。
そんな勇美の目の前に、ある物が飛び込んで来た。
「?」
それに勇美は気付くと首を傾げたのである。──何だろうこれは?
『それ』はとても奇妙な物体であった。形容するのが難しい形状をしているが、敢えて例えると科学の授業で使うような『分子構造』の模型のように、沢山の球体がくっつき合うかのように出来た機械であった。
まあ、この物体が何かを知らない勇美が考えても埒が明かないというものだろう。なので、彼女は相方にその真偽を委ねる事にした。
「鈴仙さん、一体これは何ですか?」
「ああ、大丈夫ですよ勇美さん。これは私の見知った者が遣わせた物ですから」
鈴仙の知る者の所持品。それなら心配は要らないだろう。そう思って勇美は先を急ごうと歩を進めようとするが……。
「うわっ!」
勇美の足元にエネルギー弾が命中して爆ぜたのだった。そして、後ろを見やれば先程の分子構造から発せられた事が分かった。
「……」
その事を確認した瞬間、勇美の口から鈴仙に抗議の言葉が出てくる。
「鈴仙さん、これ知り合いの物ですよね! 何で
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