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助け出されたのは何と
第一章

[2]次話
               助け出されたのは何と
 エストニアのバルヌ川流域、冬のその場所であった。
 灰色の犬が川の堰の深みに落ちていた、その話を聞いたレスキューの人達はすぐにその犬を救助に向かった。
 そうして犬を助けたが犬は逞しい身体で灰色の毛であった、レスキューの人達はその犬を見て言った。
「さて、誰の飼い犬かな」
「首輪ないから野良犬か?」
「だったら里親探さないとな」
「そうしないとまた事故に遭うし」
「そうするか」
「クゥ〜〜ン」
 犬は大人しかった、それで誰もがこの子ならすぐに里親を募集しても見付かると思った。だが診察した獣医は。
 レスキューの人達に難しい顔で言った。
「この子犬じゃないですよ」
「まさか」
「犬じゃないとしますと」
「この子狼ですか」
「まさかと思いますが」
「はい、狼です」
 その通りだとだ、獣医は答えた。
「この子は」
「まあ犬は元々狼からそうなっていますし」
「狼が家畜になったものですからね」
「犬にそっくりなのも当然ですね」
「この子も」
「雄で生後一年位ですね」
 獣医はこうしたことも話した。
「それで野生です」
「我が国には野生の狼もいますし」
「そのうちの一匹ですね」
「じゃあこの子の里親を探すことは」
「しない方がいいですね」
「野生の子は野生に返した方がいいかと」
 こうレスキューの人達に話した。
「やはり」
「そうなりますね」
「ではこの子は返しましょう」
「そうしましょう」
「はい、ただ野生の狼は今や貴重です」
 欧州ではそうなっている、かつては悪魔そのものとして忌み嫌われたが今では野生の狼は極めて貴重になっているのだ。
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