四十五 因縁の相手
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ズン…と空気が重く張り詰める。
霧隠れの鬼人来訪の際も凄まじい緊張感が漂ったが、それよりも遥かに重苦しい重圧が、この場にいる人間に圧し掛かる。
息をするのも忘れ、シカマルは新たなる乱入者を凝視した。
(だれだ…?)
顔は、見えない。
目深に被ったフードがはためくも、相手の容貌は微塵も窺えなかった。
しかしながら華奢な身体でありながら、アスマを容易に吹き飛ばした事からも一筋縄ではいかぬことが窺える。
なにより、黒地に赤き雲の衣が『暁』である事実を物語っていた。
「次から次へと…!」
「奴らの仲間、か…?」
イズモとコテツが、新たに現れた人物に警戒心を抱く。
霧の彼方まで吹き飛ばされたアスマの安否が気になるが、現状、下手に動けば命取りだ。
どうする…?と頭を目まぐるしい回転させるシカマルに反して、この場の重い空気とは裏腹に明るい表情を浮かべた飛段が眼を輝かせた。
「邪神様、来るなら来ると言っといてくれよォ〜」
先ほどまでとは打って変わって、上機嫌な飛段に対して、フードの人物は視線のひとつも寄越さない。
これが角都ならばすぐさま口喧嘩に勃発するところだが、飛段は気にせずにむしろ喜々として言葉を続けた。
「それより邪神様、俺の鎌、すげー似合ってるなァ!!」
普通、自分の得物を他の人間に取られたら、躍起になって取り返そうとする。
更に飛段の性格から考えて、鎌を奪われたら即座に怒り狂うだろうに、逆に楽しげな様子を見て取って、シカマルは顔を顰めた。
邪神様と呼ばれた当の本人は飛段とは違って不機嫌そうに鼻を鳴らすと、鎌をくるりと回す。
三刃の大鎌をひゅんっと手のひらでもてあそぶその姿は、どことなく確かに邪神と呼ばれてもおかしくはない雰囲気を放っていた。
ボコリ…と一面の水面の中心で水球が浮かぶ。
水でできた球体は、一度閉じ込められれば内側から破るのは困難。
更に、息ができなくなる故に、いずれ溺死する。
その水牢の中に囚われていた角都は遠目で、飛段の隣に佇む乱入者の姿を見た。
僅かに眼を見開く。
その口が名を呼ぼうとする直前、水牢の術者がそれより先に口を開いた。
「おいおい、なに余所見してんだ」
【水牢の術】で角都を閉じ込めた再不斬は、手を置いた水球の中を「俺は眼中にないってか?」と覗き込んだ。
術者が触れていなければ維持できない水牢。その囚人を挑発する。
「てめぇが袋の中の鼠っていう現状を理解していねぇみてーだな」
再不斬の嘲笑を水の内側から受けた角都は、顔色ひとつ変えずに瞳を眇めた。
「鼠、か…」
微塵も焦
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