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緋弾のアリア ―瑠璃神に愛されし武偵―
T La bambina da I'ARIA…
第013弾 魔術師の対峙
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の方が速いので」
「事実だけど言われたくなかったなあ」

 女子に担がれる男子という、大変間抜けな構図にため息を吐きつつも、抵抗する様子はない潤。コイツにプライドはないのだろうか。
 まあ、当然だけどさ、

「逃がすと思ってる? 氷槍(ヤクラーティオー)──」
「逃がして欲しいねえ」

 足止めをしようとした矢先、抱えられた状態の潤がUSPを向ける。引鉄に掛けた指の動きは分身が消えたためか、先程の比ではない……でも、同時なら問題ない。

弾雨(グランディニス)!」


 発砲と同時、詠唱を終えると先程の氷の矢より一回り以上も大きい、槍と言えるサイズの氷塊が、二人に向けて猛然と迫る。

 進路上の9mmパラベラム弾と氷の槍が対峙し、衝突──した次の瞬間、銃弾から暴力的な光が放たれ、視界を潰してくる。

「うっ!?」
「〈うわ、まぶし!? 〉」

 反射で目を閉じながら、自分の失敗に歯噛みする。武偵弾は最初に使われていたというのに……! 

「それでは、次回の公演をお楽しみにー」

 ふざけた言葉の後、銃声。音は一発だったが、空気から感じられる銃弾の数は六発。キンジが言っていた、十八番の速射(クイックドロウ)か。

 視界を潰されながらも小太刀で全弾叩き落としたため無傷だが、逃げるだけの時間は与えてしまった。

「(瑠璃、追うよ──)」
「〈ううー、まぶしい、まぶしいよお……〉」
「……」

 ダメだこりゃ。目を抑えてうずくまってる姿が容易に想像できる瑠璃のセリフに溜息を吐き、心結びを解除する。

「〈うー、ようやく普通に見えるようになってきた……凪優は大丈夫? 〉」
「平気、咄嗟に庇ったから。追跡は……無理か」

 感じられる二つの気配は、随分遠ざかっていた。瞬間移動なら追いつけるかもしれないが、減っている魔力をさらに消耗してしまうし、待ち伏せされているかもしれない以上、リスクは避けるべきだろう。

「〈逃げられちゃったね……それにしても遠山潤、本当にふざけたやつ! 〉」
「でも、少し厄介だ。次は最初から潰す気でいかないと」

 瑠璃が憤っている中、私は顎に手を当て先程の戦闘を振り返る。
 今回のように消耗を強いられる戦いを避けるには、やはり短期決戦が一番だろう。ダメージは大したことないが、心結びの消耗が思ったより激しく、全力の戦闘は一日は無理だろう瑠璃も既に眠たそうな気配を感じるし。次からはタロット要るな、こりゃ。
『武偵殺し』の一件、予定変更しないとかな。予備プランの正面からじゃなくて、変装して先に侵入しておいて……

「……っと。ようやく来たか」

 遠くから響く、サイレンの音。あれだけ銃声どころか爆発音も響いていたのに、随分な重役出勤である。


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