第一章
[2]次話
突然の来訪の理由
新潟県に住む後藤田智昭はこの時家の玄関の方から猫の鳴き声を聞いた、それで妻の未可子に言った。
「猫の鳴き声聞こえるよな」
「そうね」
未可子も応えた、智昭は大柄で百九十近い。工事現場の監督をしているだけあって筋肉質であるが顔立ちは優しい。髪の毛は黒くスポーツ刈りだ。未可子は大きな目で眉は細く目に添った形をしている。赤い唇は大きめで色白である。黒髪は跳ねている部分もあり背中の真ん中位まである。背は一六二程でスタイルもいい。
「何か」
「ちょっと見て来るな」
こう妻に言った。
「そうしてくるな」
「化け猫とかじゃないわよね」
妻はふと冗談でこう言った。
「まさか」
「それ佐賀だろ」
夫は笑って返した。
「ここは新潟だからな」
「化け猫はないかしら」
「いるかも知れないけれどな」
「多くないのね」
「化け猫でもいいけれどな、猫又とかな」
尻尾が二本あるこの妖怪でもというのだ。
「魚くれとか言ってきたらやってな」
「帰ってもらえばいいわね」
「ああ、じゃあ見て来るな」
夫は妻に笑ってその大柄な身体を動かして玄関に言った、猫の鳴き声はまだ聞こえている。夜なので確かに化け猫めいていた。
夫は玄関を開けた、すると。
「ニャア」
「やっぱりな」
見れば猫が玄関の前に座っていた、ペルシャ猫に似た感じの毛のトラ猫だ。黒い目がやけに光っている。
猫はしきりに鳴いてきた、それで夫は猫に問うた。
「うちの猫になりたいのか?」
「ニャア」
「ちょっと相談するな」
妻と、とだ。夫はとりあえず猫を玄関の中に入れて妻を呼んだ。そのうえで妻に猫を見せながらそのうえで話した。
「うちの猫になりたい感じなんだよ」
「首輪がないから野良ちゃんね」
「そうみたいだな」
「そうね。私は別にね」
妻は夫に猫を見つつ答えた。
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