第三章
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「ずっとご主人が心配でここで待っていましたが」
「はい、僕と兄の言うことは何でも聞いてくれるので」
彼は医師に微笑んで答えた。
「ですから」
「左様ですか」
「はい、この子達を連れて帰って」
「そうしてですね」
「兄の帰宅を待ちます」
「それまでお待ち下さい」
「そうさせてもらいます」
彼はここでも微笑んで答えた、そうしてだった。
犬達を連れて帰った、それからアルペデスは治療に専念し。
退院することが出来た、すると。
「ワン!」
「ワンワン!」
病院の玄関に弟が待っていた、そして。
犬達が彼に飛びついてきた、彼は自分に甘える犬達を撫でながら言った。
「待っていてくれたんだな」
「ワンワン!」
「ワン!」
「そうか、心配かけたな」
「兄貴をずっと待っていたんだよ」
弟も彼に言ってきた。
「入院している間」
「そうだったんだな」
「うん、お店の方は順調だったよ」
「留守の間悪かったな」
「この子達も元気だったし」
犬達もというのだ。
「兄貴を心配していたけれどご飯はよく食べて寝てもいたよ」
「それは何よりだよ」
「うん、じゃあ今から」
「帰ろうか」
「この子達と一緒にね」
兄に笑顔で言ってだった、彼等は自分達の場所に戻った。その彼等を見送って病院にいる者達彼を救急車で担ぎ込んだスタッフ達も言った。
「ずっとご主人を待っていたんだな」
「心配して」
「だから救急車の中でも寄り添って」
「それで入院してからも入り口で待っていて」
「それで退院したら出迎えた」
「そうしたんだな」
「それが犬の愛情か」
家族に対するそれだとわかって言うのだった。
「素晴らしいな」
「人間にも負けていないな」
「いや、悪質な人間よりずっと凄いな」
「世の中酷い奴もいるしな」
「そうだよな」
「立派な犬は悪質な人間より遥かに素晴らしい」
この言葉が自然と出た。
「本当にそうだな」
「あの犬達を見てわかった」
「あの子達は立派な犬だ」
「下手な人間よりずっと素晴らしい」
彼等を見送って話した、その後アルペデスは弟そして犬達と共に楽しく過ごしたという。優しい家族達に囲まれて。ペルーでの些細だが心温まる話である。
救急車の中でも 完
2021・2・18
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