春谷舞は愚痴りたい
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をしてきた捨犬から見ても、美しいものだった。
「……だったらさ、春谷ちゃん。いっそのこと兄者達のフォローをしながら、新しい恋を始めてみるってのはどう?」
だから捨犬は、何となくそんな提案をしてみた。
「………見届けることで諦めるのではなく、新たにすることで忘れろと?」
「そうそう、見方を変えてみるってことさ。たとえば俺とか……な〜んてね!」
捨犬のその一言は、冗談半分、舞の横顔に見惚れてぽろりと漏れた本気が半分。
それはまた今度にしときます、などとあしらわれるのを想定した一言。
「……よろしい、のでしょうか?」
「え?」
だが。
何年も何年も、慎次を想いながらも彼の想いを尊重してきた彼女の心は……。
本人や捨犬が思っている以上に、すり減っていた。
「その……本当によろしいの、なら。そんな方向に考えてみるのも……悪くは、ないのかもしれません」
「は、春谷ちゃん?」
こちらへ振り向いた舞の表情に、捨犬はドキリとした。
酒気で蒸気した白い頬、湿った唇。
女らしい細い首や指先、先の愚痴に合わせて乱れた髪が、妙に色気を醸し出す。
「亜蘭……いえ、捨犬様」
「な、何かな春谷ちゃん」
「捨犬様から見て……私って、どうです?」
「…………………………マジ?」
その質問に、捨犬はかろうじてそう返した。
この夜の一幕が、後に始まる新たな恋の物語の一ページ目、などとは。
まだ、誰にも知られていない。
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