春谷舞は愚痴りたい
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してる私としてはぁ、じれったくてしかたがないんですよぉ!」
「あららー、これ春谷ちゃんかなり溜まってるわー……」
「んっとにもぉー、早くくっついてくれないですかねぇ! じゃないとこっちも色々整理がつかないってんですよまったくぅ……」
ゴキュゴキュ、とそれは豪快な音を立てながらグラスの中を煽る舞。
割と度数もお値段も高めな一本なのだが、そんなもの、このもどかしさを前にすればなんのその。
もはや一種の襲来イベント的な扱いになっており、捨犬を筆頭に店内のメンバーも生暖かい目で見ている。
「んっ、んっ、ぷはぁ……亜蘭様、おかわりお願いします」
「いいの?あんまり飲みすぎると明日の仕事に響くよ?」
「いいんですよぉ!!飲んでなきゃやってられないんですぅ!!」
今日はまた随分と荒れてるなぁ、などと思いながらも捨犬は言われた通りにする。
すぐさまウェイターが、二人のもとへ同じボトルを持ってきた。
捨犬からの酌で黄金の液体がグラスに注がれ、舞は瞬く間に半分も飲む。
「うぁー、ほんとどうにかならないれすかねぇ、あの二人ぃ……」
「そんなに進展しないの、兄者達?」
「そりゃもう、全然ですよぉ!もう付き合ってるくぜにぃ!なぁんで私ばっかりやきもきしてるんですかねぇ〜……」
「春谷ちゃんも大変だねぇ」
「今日なんかですね、廊下で私、あの二人にばったり出くわしたんですけど──」
そして始まる、舞の愚痴大会。
怒涛の勢いで繰り出されるそれはかなりの濃度だが、捨犬とて一流ホスト。
抜群の接客スキルで聞きに徹し、時に励まし、時に共に嘆き、呆れることで対応した。
実際それでいつも舞もストレスを発散していくので、良い流れとも言える。
「はぁ………真面目な話、いつまで続くんでしょうね」
しかし、いつもなら一回寝落ちするまでの流れは中断された。
不意に真剣味を帯びた口調を取り戻した舞に、捨犬も自然と口を閉ざす。
「何年も想い続けて、でも言い出せなくて。そしたら翼お嬢様にいつの間にかぞっこんで……フォローしてやる、だなんて勝手に意気込んでますけど。正直、辛いです」
「春谷ちゃん……」
恋敵と唯一の想い人が結ばれる手助けなど、普通ならばできない。
それができるのが彼女の強さであり、優しさであり、戒めなのだが……
「すて……亜蘭様にも毎回こうやって迷惑かけて、私結構面倒な女ですよね。自分でもわかってますよ、ええ」
「…………」
「でも、やるって決めたんです。やらなくちゃいけないんです。そうしなきゃ……私は、前に進めないから」
だから、たとえ辛いとしても、やり遂げるのだと。そう何度も見た決意する舞の横顔は。
ホストとして色々な女性の相手
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