始まりから夏休みまで
神父は決まって悪いやつって話
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だらけの右腕を凝視した。
すると、
「キミ。」
「は、はい?」
「医者にはなんて?」
急に真面目なトーンで話し出し、右腕のことは医者にどう言われたのか尋ねられた。
「も、問題はないって…そのうち治るとは…言われましたけど。」
「じゃあ、その医者、ヤブ医者だよ。」
「え…。」
「キミの腕は治らない。このままだったら腐って根元からずるりと落ちるよ。今はそれを先延ばしにしてるだけ。何故切除しないのか不思議でならないのだけれどね。」
「…。」
いきなり、
何を言い出すんだこの人は
「ご、ごめんなさい!!」
嫌な気持ちがゾッと湧き上がって、僕は思わず神父を突き飛ばして自宅へと走って帰る。
腕は治らない?
腐って落ちる?
そんな事あるわけない。
大丈夫だってお栄ちゃんも言ってたんだ。
医者だってそのうち治るって言ってたし、
そうだ。気持ちの問題だ。
治らないなんて思っちゃダメだ。
あんな見ず知らずの神父なんて…信じちゃダメだ。
そう思い、走り続ける。
やがてアパート近くの公園まで走り続け、息を整えようと一旦止まると、
「お栄ちゃん…?」
公園のベンチにお栄ちゃんが座っているのが見えた。
彼女はたまにこうして外に出て、絵を描いていることはよくある。
しかし今は、何か違う。
膝に置かれたスケッチブックは閉じられ、頬杖をついてムスッと不機嫌な表情をしていた。
何かあったんだろうか?
気になるので僕は声をかけることにする。
「お栄ちゃん。」
「ん?おかえりマイ。」
声をかけたのが僕だと分かるとこちらを向いてにっと笑いかける。
「その様子だと走って帰ってきたみたいだが何かあったのかい?」
何かあったのかというのはこちらのセリフだ。
僕の顔を見るなりいつもの機嫌に戻ってはいるが、彼女は何かにイライラしていた。
「うん。怪しい教会を調べに友作くん達とこの後自然公園に集まるように言われてるんだけど…。」
「そうかい。」
「その前に、お栄ちゃんどうしたの?なんかすごく機嫌悪そうな顔してたから。」
「ああそうだ。ちょいと聞いとくれマイ。」
隣に座り、お栄ちゃんはややイライラしながらもさっきあった事を僕に一から話してくれた。
「見ず知らずの男が来て何を言い出すのかと思えばナ。いきなりお前のますたあはどうだとか、腕は治らねぇだとか抜かしやがる。むかっ腹が立ったもんだから殴りかかればひらりひらりと交わすもんで余計にイラついた…ってどうしたマイ?」
と、公園で絵を描いていたら知らない男と一悶着あったことを話してくれたが、お栄ちゃんは途中で話をやめた。
どうやら僕の表情の変化に気付いたみたいだ。
「鳩が豆鉄砲でもくらったみたいな顔してるが…」
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