最高の陽だまり《呪い》
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とマリアさんが何とか食い止めているらしいよ。こういうとき、マリアさんは頼りになるよね」
「うん」
未来が次々と口にする名前は、響に安らぎを与えてくれた。
空返事しかできず、響は足を進める。
先導する未来は、時々響を振り返っては笑いかけていた。
胸の中に引っかかる何かが、ずっと響の顔を固めていた。
やがて、しばらく歩いた未来は足を止めた。
「未来?」
「……」
電池が切れた機械のように、未来は動きをやめた。
やがて、ギギギという効果音が似合うようなゆっくりとした動きで、未来は静かに振り向いた。
そして、その未来の顔を見て、響の顔は凍り付いた。
「シェム・ハ……」
「何を驚いていおる?」
さきほどまでの陽だまりの黒い瞳ではない。
瞳孔が赤く燿るそれは、にやりと凶悪な笑みを浮かべた。
「我を屠り、世界を救った英雄よ。何を躊躇っておる?」
「違う……ちが……」
「その呪われた拳で世界を救ったではないか。誇るがいい」
「呪われ……」
すると、未来はするりと流れるような動きで響の顔に寄る。
「二千年の呪いよりもちっぽけだと誰が決めたと言った刹那、我ごとこの依り代の少女を葬ったのは、傑作だったぞ?」
「ちが……っ!」
裏拳で振り払おうとするが、未来はまるで影のように手ごたえがない。
「何が違う? 世界を救えたのだから、依り代の少女など容易い犠牲だったのではないか?」
その声は、すぐ耳元からだった。
「違う……っ!」
振り向きざまの裏拳も、すぐにかわされる。
そして次は、真正面に気配。
「私は……私はッ……!」
その時。
ごごご、と轟音が聞こえた。
「お前の絵空事は虚空へと消えた。呪いの明日はお前を蝕む」
「止めろぉ!」
無意識のガングニールの起動。
だが、未来は響の拳をかわし、ケラケラとせせら笑う。
拳が届かなかった響は、そのまま膝を折った。
「未来は……未来は、私にとって大切な人だよ……それは絶対、間違いなく言えるよ!」
「つまりお前は、大切な人を犠牲にすることを厭わなかった。なんとも英雄的行為ではないか」
そして、地面を唸るような音が少しずつ大きくなっていく。
そしてその音源は、どんどん響の足元に近づいてくる。
そして。
『カラダ……ヨコセ……!』
「うっ……」
どんどん揺れが大きくなっていく。揺れはやがて、足元から響の体へ直接流れ込んでいく。
「がああああああああああああああああああ!」
未来の体が、町中の風景がひび割れていく。やがて世界は、あたかもガラス製だったかのように粉々となり、響の世界は、
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