6 貝殻(たからもの)
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藤木はダイニングへと通された。そこへケーキと紅茶をご馳走になった。ケーキは生クリームが塗られており、ショートケーキのようだったが、苺ではなく、ブルーベリーが乗っていた。
「うわ、このケーキ美味しいですね」
「うん、ママの好きな製造者のケーキなの。他のケーキや焼き菓子もあるわよ」
「へえ、いいね。羨ましいよ。ウチじゃこんな美味しいもの食べられないからね」
「この紅茶も美味しいですね」
「それは三重県で栽培された伊勢紅茶よ。ストレートのままでもミルクを入れても美味しいのよ」
リリィの母が答えた。
「へえ、日本にも紅茶を生産しているんですね」
「ええ、静岡県もお茶が有名でしょ。緑茶にして飲む人が殆どだけど、紅茶にしても美味しいのよ」
「へえ、静岡県生まれなのに初めて知りました」
紅茶を飲み終え、ケーキを食べ終わった。
「藤木君、私、藤木君に見せたいものがあるの。私の部屋に来てくれるかしら?」
「うん、ありがとう」
藤木はリリィに彼女の部屋へ連れて行ってもらった。
「藤木君、私が初めてあなたと会ったとき覚えてる?」
「あ、うん、僕は花輪クンの別荘のビーチで貝殻を拾っていたんだ。そしたら君がやって来たんだったね」
「そう、そして営火の夜にまた会ったとき、あなたは私に貝殻をプレゼントしてくれたわよね」
リリィはそう言って机に置いてある瓶を持ってきた。その中にはあの時、藤木がリリィにあげた貝殻が入っていたのだった。
「名前は忘れていたけどこの貝殻をくれたあなたの顔はしっかりと覚えていたの。そしてこの貝殻もずっと宝物として大切にしていたのよ」
「そうだったんだ・・・」
藤木はこの貝殻を思い出して嬉し涙を流してしまいそうになった。
「リリィ・・・、大切にしてくれて、ありがとう・・・」
「藤木君も私のことを覚えていてくれてありがとう」
「うん、でも花輪クンじゃなくて、がっかりしたんじゃないのかい?それに僕は卑怯だし・・・」
「卑怯?そんなことないわよ。昨日私のために必死で庇ってくれたんだもん、嬉しかったわ。確かに花輪クンも素敵だけど貴方も優しいところ、あるのね」
「リリィ・・・」
藤木は嬉し泣きしてしまった。なぜなら一度消えた恋が蘇ったのだから。
花輪家では花輪が紅茶を一杯飲んでいた。
(リリィクン、きっと藤木クンと楽しい一時を過ごしているのかな・・・)
そして花輪は思う。
(藤木クンも良かったじゃないか。想い人とまた会えたんだから・・・)
リリィは瓶の貝殻を見る。
(藤木君、私、今度はもう藤木君の事、忘れないわ・・・)
リリィはラブレターの件で彼の名前を忘れてしまった事を反省すると共に、藤木に対して他の友達とはまた異なった想いを抱く
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