第101話『予選F』
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
身体を上手く動かせない。
「ッ!」
「待っ……!」
そんな無防備な緋翼に、無情にもゲノムが突っ込んでくる。マズい、この状態では攻撃は避けられない。次ダメージを喰らえば、リタイアになること必至である。
「そんな……! こんなとこで……!」
運が悪かった、としか言いようがない。10Pt級モンスターというのは、緋翼の手に余る強さだった。これと相対した時点で、この未来は必然だったとも言える。
しかし、だからと言って納得できる訳もない。モンスターと違って、緋翼には背負うものがあるのだから。彼の願いを果たすまでは、倒れられないというのに。
「ごめん、黒木……」
呟き、緋翼はリタイアを覚悟する。ゲノムの魔の手はもう、すぐそこまで来ていた。
──やられる! そう思ってぎゅっと目を瞑った瞬間だった。
「ッ!?」
「え……?」
ゲノムが悲鳴のような声を上げ、攻撃を中断したのだ。何事かとゆっくり目を開いて見てみると、緋翼の目の前に驚きの人物が立っていた。
「やぁ、無事かい? 緋翼ちゃん」
「どうしてあなたが……!?」
金髪を揺らし、輝く剣を握った青年──アーサーがそこにはいた。
*
「げほっ! げほっ!」
「三浦君!」
「うわ、猿飛さん……?!」
「意識が戻ったね、良かった」
水を吐き出して咳き込む晴登は、目の前に風香の顔が見えて狼狽える。しかし、寝ているのに周囲の景色が移り変わっていくことや、やけに身体が揺れることから今の状況をうっすらと察した。
「あの、俺何でお姫様抱っこされてるんですか……?」
「だって、三浦君が水柱に呑み込まれたと思ったら、溺れて落ちてくるんだもの。慌てて捕まえたよ」
「なるほど……すいません、迷惑かけて」
そう、今風香は晴登をお姫様抱っこで抱えながら疾走しているのだ。慌てて、と言った割には、随分と涼しい顔をして走っているような気もするが。
それにしても、彼女が踏んだ地面からも例外なく水柱が上がっている訳だが、晴登を抱えてもなお噴水に追いつかれないなんて、やっぱりこの人は只者じゃない。
こうして抱かれて彼女の視点になったからこそわかるが、とても速く、そして軽やかだ。同じ風でも、晴登とは大違いである。
そこまで分析して、ふと晴登は周りからの視線を感じた。
「この格好、恥ずかしいですね……」
「そうだと思うけど、この地帯を抜けるまでは我慢してね」
ただでさえ、お姫様抱っこというものは注目を集めるのに、男子が女子に持ち上げられようものならその恥ずかしさは倍以上だ。風香はあまり気にしていないようだが、当然晴登は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ