第101話『予選F』
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その「どうにか」が簡単ではないのだが。森の中を上手く掻い潜って逃げるという方法はあるが、それくらいで撒けるとは到底思えない。他に何か手は──
「森、か……」
あくまでゲノムから視線を外さず、緋翼は辺りが森であることを再確認する。ならば、この手しかあるまい。
「"灼熱の檻"っ!!」
「ッ!」
叫ぶ緋翼の放った焔は、草木を介して瞬く間にゲノムを囲んで燃え盛る。
そう、この技は裏世界でブラッドとの戦闘の際に用いた"焔の柵"と同じ原理である。ただし、無尽蔵に燃やすものがある森の中である以上、こちらの方が火力も範囲も上位互換。そう易々と脱出は許さない。
「これで時間を稼いで──」
緋翼がしたり顔をしたその瞬間、焔の海が瞬く間に霧散した。その中心には両手を大きく広げたゲノム。まさか、腕を振るっただけでこの技を破ったというのか。緋翼の表情がみるみる青ざめていく。
「逃げ、られない……」
その事実が、緋翼を強く苦しめた。彼我の間には圧倒的な実力差。勝率はほぼゼロに等しいのだと察することくらいできる。
──それでも、逃げられないのなら立ち向かうしかない。
このまま無様にやられてリタイアする。これほど屈辱的なことはないだろう。そんな結果は誰も望んでいないし、望ませない。
「上等よ。かかってきなさい、この化け物!!」
「──ッ!!」
緋翼が吠えると、ゲノムも不気味な声で吠え返してきた。そして地面を勢いよく蹴り、一目散に緋翼の元へと迫る。
それに対して、緋翼は刀を横に構えて待った。
「ここだ! "不知火返し"!」
「ッ!?」
ここで力を発揮するのが、突進してくる相手限定のカウンター技、"不知火返し"。挑発して突っ込むよう促したのも作戦のうちである。
企みは見事成功し、緋翼はすれ違いざまにゲノムの横腹を切り裂き、さらに焔が爆ぜて爆発を生んだ。
「これはかなり効いたんじゃないの?」
上手くいったと、思わず笑みを零す緋翼。
前も説明したが、この技の威力は相手の突進の威力に依存する。そして今回は馬鹿力のゲノムが相手だ。つまり、カウンターの威力は猪の時とは桁違いになるだろう。いくら頑丈そうなゲノムでも、さすがにこの一撃には耐えられ──
「──ッ!!」
「嘘っ……がはっ!?」
油断していた緋翼の腹に、爆風から飛び出してきたゲノムの拳が突き刺さる。不意をつかれたその攻撃を防ぐこともできず、緋翼は無様に地面を転がり、木の幹に突撃した。
「うぅ……どんだけ頑丈なのよ、あいつ……!」
そう洩らしながら、緋翼は痛みに悶えて蹲る。今の一撃がかなり効いた。立ち上がろうにも、苦しくて
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