第101話『予選F』
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上位どころかリタイアになってしまう。かといって、1枚ずつ扉を開けていくのも現実的でない。
「どうする、どうする、どうする──」
「あれ〜あなたは確か〜……」
「っ!?」
頭脳をフル回転させ、最善手を導こうとしていた、その時だった。突然、間の抜けた女性の声が耳に届く。
びっくりして見ると、そこには洞窟には似合わないようなおしゃれなドレスを身にまとった少女がいた。
「あんたは【花鳥風月】の……!」
「櫻井 花織です〜。あなたは暁君でしたっけ〜? あなたも謎を解いてここまで来たんですか〜?」
「え、まぁ……」
「なるほどなるほど〜」
にっこりと柔和な笑みを浮かべながら、一人で納得しながら頷く花織。一体何がなるほどなのかと疑問に思ったが、そこではたと気づいた。
「『あなた"も"』って、まさかあんたも……!」
「そうですね〜。私も謎を解いてここまでやって来ました〜」
そう言って微笑む花織。しかし、伸太郎は全く笑えない。
なぜなら彼女の言うことが正しければ、『近道を通ってきた者がここに辿り着く』ということになる。それすなわち、この空間がゴールに繋がることは必定であり、是が非でも扉もしくは天井を調べざるを得なくなってしまったからだ。
「できればやりたくなかったけどな……」
ふと彼女が来た方向を見ると、伸太郎が入ってきた所とは別の入口があったことに気づいた。いや、間違いなくさっきまでは存在していない。突然現れている。
となると、ここへはどのルートからでも到着できるのだろう。それならここに辿り着く人も、そのうち増えてしまうに違いない。迷ってる暇はなさそうだった。
「だったら早いもん勝ちだ!」
伸太郎は花織との会話を切り上げ、階段の方へと駆ける。そして早速、一番近くの扉を開けた。
「なるほど、そういう感じか」
そう呟いて、苦笑を浮かべる。扉の向こうは小さな空間があるだけの行き止まりだった。恐らく、この空間にあるほぼ全ての扉が同じようなダミーだと考えられる。
であれば、やることは一つに絞られた。
「最上階まで登り切ってやる……!」
現時点で、これが最もゴールの可能性が高いルート。よって伸太郎は、この無限に続くかのような階段を登ることを選択した。
晴登のように、魔術で身体能力を強化できる訳じゃない。伸太郎は貧弱な肉体となけなしの体力で、この地獄のような道を進まなければならないのだ。だが少なくとも、この少女には負けたくないと心が叫んでいる。
「見た感じ運動は得意じゃなさそうだし、これなら俺にだって勝機が──」
「あらあら、魔術というものをお忘れですか〜?」
「なっ!?」
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