第101話『予選F』
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鳥の翼に変化させる』といった具合か。空を自由に飛び回っており、晴登が聞いたら羨ましがりそうな能力である。とはいえ、問題はそこではなく、
「さっきからボクの上ばっかり飛ばれるから困るな……」
そう、結月の悩みの種はそこだ。
というのも、2周目も頭上に吹雪を放つ作戦を決行していたのだが、いつからか舞がその射線上を飛ぶようになったため、ペナルティ怖さで下手に吹雪を撃てなくなったのだ。一方結月が狙えなくなった分、彼女はその的を奪っていく。なんて悪循環だ。心なしか、彼女がしたり顔をしているように見える。
「むぅ……こうなったら吹雪以外の方法を模索するしかなさそう」
スピードと範囲という点で吹雪は優れていたが、邪魔されるとあってはどうしようもできない。かといって、また的を1つ1つ狙うのは非効率だ。勝ち上がるには、何か革新的な作戦が欲しいところ。
「でも、そんなの思いつかないよ……」
物覚えは良い結月だが、発想力となると話は別である。力で全てを解決する彼女にとって、策を練るのは最も苦手とすることだ。だから、そういうことは全て晴登に任せている。そのためここでも彼の力を頼りたくはなるが、
「ここにはボクしかいなくて、誰の助けも得られない。全部、自分でどうにかしなきゃいけないんだ」
この場には一人とて結月の仲間はいない。周りは全て敵で、負けることも許されない。彼女に求められるのは、上位での勝利のみ。
そんな危機的な状況だと気づくと、不思議と笑みが零れてきた。
「このままじゃ、ハルトに合わせる顔がないや」
恋人を想い、己に喝を入れる。本当は終夜のためと言いたいところだが、やはり彼女の中では晴登が一番だ。彼が諦めない限り、結月だって諦めるつもりはない。
結月は必死に思考を巡らす。他の人たちと同じではダメだ。腐っても鬼族、その力を生かす時は今ではないのか。周囲を凍てつかせ、全てを圧倒する鬼の力を──
「周囲を、凍てつかせ……?」
ふと、結月は何かに気づく。そう、鬼化すれば常に冷気を身にまとって……いや違う、そこじゃない。
少し前の記憶──異世界にて、鬼化したヒョウがやっていたこと。吹雪とは違う、周囲を攻撃……もとい、"魔力で満たす"手段。そうだ、この手があった。
「ヒョウにもできるんだから、ボクにだってできるはず。出力を抑えれば、たぶん大丈夫……!」
結月は目を閉じて集中し、身体中の魔力を額に集める。そうして生まれるのは、彼女が鬼であるという絶対不変の象徴、"角"だ。そう、鬼化である。
ただし、変化は角だけに留めた。そうすれば鬼化の負担はかなり軽減するからだ。
「少しずつ……少しずつだ……」
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