第101話『予選F』
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「何ですか、ここ……」
余りの光景に、足を止めてそう洩らした晴登。その隣には、同じく走りを止めた風香がいる。
そして、彼らの視界の先にあるのは、
「うわぁぁぁ!?」
「危ねっ!!」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
悲鳴だけを聴けば悲惨な状況を想起するだろうが、事態はそこまで深刻という訳でもない。
というのも彼らはただ、あちこちの地面から湧き出る水流に打ち上げられているだけなのだから。
「間欠泉……みたいなものかな」
そんな風香の冷静な解析が隣から聞こえた。
少し道幅が広がった先で、魔術によってか、穴もない地面から突如水柱が空へと伸びている。これが次のギミックということだろう。見た目は間欠泉と形容するのが一番近いとは思うが、それにしてはどうにも水柱が高すぎた。
「あれ、20mくらいありません?」
「空を飛ぶ人も注意が必要ってことかもね」
「な、なるほど……」
その理論に納得しつつ、並大抵の人が打ち上げられたら助からないだろうなとか悠長なことを考えてしまった。いけない、競技に集中しないと。
「見たところ、水柱が出るのはランダムみたいだし、慎重に行くよりも全速力で突っ切った方が良さそう」
「わかりました」
そう言うと、風香はクラウチングスタートの姿勢をとった。あまりに様になっているその構えを見て戸惑いながら、晴登は普通に構える。
「いくよ──GO!」
「うわっ!?」
彼女はそう合図したと同時に、勢いよく地面を蹴った。その力強さは地面を抉るほどであり、加速の時の風圧で晴登は危うく吹き飛ばされそうになる。
「俺も行かなきゃ……!」
スタートが少しだけ遅れたが、晴登も全速力で走り始めた。足に"風の加護"を与え、風香に言われた通りになるべく姿勢を正している。
すると、背後で晴登の足跡を辿るように次々と水柱が噴き出してきた。
「やべっ!?」
ここまで正確に晴登を狙ってくるのであれば、もしやランダムではなくて踏んだ所から噴水する仕組みなのではなかろうか。ここで足を少しでも緩めれば、その瞬間に宙へと打ち上げられてしまうだろう。追いつかれてなるものかと晴登は必死に逃げ、風香の背中を追いかけた。
「ん、背中……?」
しかしその時、晴登は違和感を覚えた。
通った場所から噴水すると言うのなら、それは風香も例外ではない。つまり、その真後ろを走る晴登の足元からは当然──
「避けなきゃ──がぼぼぼっ!!」
「三浦君!?」
急いで避けようと思ったが時すでに遅し。晴登は地面から勢いよく立ち上る水柱に巻き込まれてしまった。
その悲鳴を聞いて風香は晴登の名を呼ぶが、水
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