装者達のバレンタインデー(2021)
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いよなぁ……」
「いや、毎年櫻井女史や友里さん達が配ってるだろ。義理だけど」
「そうだけどよぉ……こうも周りにカップルが多いとさ、本命が欲しくなるんだよ!!」
「まあ……言わんとする事はわかるな……」
職員達は天井を仰ぎながら呟き続ける。
「装者の子達と伴装者達は熱々のお似合いカップル揃いだし……尊い」
「風鳴司令は櫻井女史から本命貰ってるし……勝てねぇ」
「前はこっち側だった藤尭のヤローも、去年から友里さんといい感じだし……ケッ、抜け駆けしやがって」
「俺達完全に取り残されてるな……」
「それなー」
常日頃から甘い雰囲気を振りまいている彼ら彼女らを思い出しては、思わず溜息を吐く職員達。
気付けば声を揃え、同じことを口にしていた。
「「「はぁ……本命チョコが欲しい……」」」
「あ、皆さん!ちょっとよろしいですか?」
と、そこへ可愛らしい声と共に、とてとてと言う小さな足音が向かってきた。
職員達が振り返ると、小学生程の背丈と頭の後ろで編んだ金髪、トレードマークの白衣に身を包んだ少女が足を止めた所であった。
「エルフナインちゃん?どうしたの?」
「これ、皆さんに渡したくて!その……ハッピーバレンタインです!」
膨らんだ紙袋の中から取り出されたのは、拙いながらもラッピングされたチョコレートクッキーだった。
装者達や女性職員の面々と共に、朝から頑張って用意したそれは、エルフナインが初めて作ったバレンタインの贈り物。
綺麗に型抜きされたクッキーの数々を、少々不格好なラッピングが際立てる。
手作り感満点、作った彼女の一生懸命な気持ちが伺える。
そして、そこに込められたエルフナインの感謝は、バレンタインで燻っていた彼らの嫉妬心をあっという間に吹き飛ばした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおフナちゃんありがとおおおおおおおおおお!!」
「天使!マジ天使!!エルフナインちゃん最高だよ!!」
「前言撤回!!エルフナインちゃんからのチョコなら、義理でも友でも何でも構わんッ!!我が神此処に在りィィィィィッ!!」
泣いて喜ぶ者。天を仰いで祈りを捧げる者。床に膝を着き、エルフナインを拝む者……。
ともかく、彼らはエルフナインからのクッキーを手に、溢れ出す感謝と共に笑顔を向けた。
「えへへ……喜んでもらえるなら、何よりですっ!」
「まったく……。男って本当にバカなんだから」
ひたすら感謝を送ってくる男性職員らに、嬉しさを顔いっぱい広げるエルフナイン。
そして、職員らの愚痴を最初から全て聞いていた友里は、彼らの掌コークスクリューっぷりに呆れて肩を竦めるのであった。
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