装者達のバレンタインデー(2021)
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問に、奏は思わず間抜けな声を上げてしまう。
まるで、鳩が豆鉄砲をくらったような顔の奏を見て、紅介は首を傾げた。
「そ、そりゃあ……ファンサービスなんだからな。二課……いや、今はS.O.N.G.か。ともかく、職員さん達に渡すのと同じやつじゃ、ダメだろ?」
「なるほど!とことんファンへのサービス精神を意識してくださっているなんて、流石奏さんッ!」
「ま、まあな……」
内心ホッとしながら、奏は紅介を見つめる。
なんだか、いつもよりも照れ臭い気分になるのを感じながら、奏は深呼吸した。
「お返し、期待してるからな?」
「あったりまえです!!ちゃんと三倍で返しますので!!」
「大袈裟だなぁ。ま、期待してるぜ」
「はいッ!」
そう言って奏は紅介の前から立ち去る。
そして廊下の角を曲がると……
「……はぁ〜、緊張したな……」
誰にもみられていない事を確認し、奏はホッと胸を撫で下ろした。
「紅介のやつ、気付くかな……。いや、あいつが気付かなくても、知ってる奴が教える可能性はある……か」
仲間達や職員らにはクッキー。しかし、紅介だけにはマドレーヌ。
そこに込められた意味を理解した時、彼は何を思うのだろうか。
「まあ、今のあたしらにはこれくらいが丁度いいよな」
奏自身、らしくないと思えるほど消極的なメッセージ。
もっと大胆にいけばよかったか、とは思うが、プレゼントはもう渡してしまった後だ。
「仕方ないじゃないか……初めてなんだから」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、奏はその場を後にした。
ちなみにこの後、案の定紅介がぶっ倒れて医務室に搬送される事となったらしい。
ff
「恭一郎くんッ!今日、何の日か……覚えてるよね?」
その日の帰り道、背中に何か隠した未来さんが緊張気味に問いかけてきた。
「今日は……2月14日、バレンタインデーだね」
「うん……だから、ね……チョコレート、作ってきたの」
「……未来さんからの、チョコレート……!?」
正直、期待はしていた。
でも、やっぱり貰えるって聞くと、驚きの方が勝ってしまう。
なにせ、バレンタインに貰う異性からのチョコレートなんて、母さんと妹以外から貰った事がない。
だから、思わず緊張してしまう。
僕らは既に恋人同士だと言うのに。
「その……男の人に作るの、初めてだから……ちょっと変かもしれないけど……」
未来さんの顔は、少し赤い。
普段はもっと積極的に、僕よりも余裕のある顔で、少し意地悪な笑みさえうかべながらアプローチをかけてくる未来さんが。
バレンタインと言うだけで、こんなにも緊張している。
しかも、男の人に渡すのは初めてだと言う。
未来
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